編集長ブログ

愛してやまない、ドラマ『密会』Vol.1/“密会沼”の入り口

ドラマ『密会(2014)』は、若き天才ピアニスト、イ・ソンジェ(ユ・アイン)と彼のピアノ教師オ・ヘウォン(キム・ヒエ)のラブストーリーだ。師弟が恋に陥るのは珍しい話ではないが、20歳の青年と40歳の人妻という歳の差、下町で母と2人暮らしのソンジェ(ユ・アイン)、財閥という上流社会の中で暮らすヘウォン(キム・ヒエ)という格差社会の設定がドラマの鍵を握る。『密会』というタイトルを煽るかのように、ドラマのポスターや予告編は驚くほど官能的。しかも二人が並んでピアノを連弾するシーンが恍惚に溢れ、実に艶かしいのだ。熱く迫るラブシーン、緊迫感のあるBGM、ドラマチックなピアノの旋律、絶えず湿感を帯びている2人の肌・・・いやが応でも見る者の好奇心を刺激する。

しかし、これは“密会沼”に足を踏み入れるほんの入り口にすぎない。

ドラマ『密会』の韓国版ポスター。撮影時のキム・ヒエの実年齢は47歳。ユ・アイン は28歳。ドラマの設定とほぼ同じ19歳差があるが、羨ましいくらい素敵なカップルだった。

ドラマ密会公式サイト

http://c7mikkai.jp/#top

『密会』は音楽が主役のドラマだ

『密会』は、「歳の差20歳の不倫物語」ということについつい興味をそそられてしまうが、これは音楽が持つ限りない可能性で魅了する、音楽が主役のドラマなのだ。韓流ドラマは素晴らしいOSTが多いが、ほとんどのOSTは演技やドラマを盛り上げる効果として使われる。しかし『密会』は、音楽は最初から最後まで、まさに“俳優”としての重要なポジションにあるのだ。これが他のドラマとは全く違うところだ。私は『密会』で、クラシック音楽のたくさんの素晴しさを学び、喜びを与えてもらった。

『密会』は、全16話。1話からクラシック音楽の美しさ、ドラマに潜む音楽の奥深さにぐいぐい引き込まれていく。セリフは少ない。その分映像と音楽で、俳優の心理が表現されていく。息を呑む迫りよる『密会』のBGM、時には感情を揺さぶるクラシックの名曲で、視聴者は音楽に導かれ、音楽とともに心地よい物語のフィナーレを迎える。

ハラハラするサスペンスやどんでん返しがあるわけでもない。余計なものがそぎ落とされた純粋なラブストーリーであるが、見終わってみると、このドラマがいかに目に見えない細部にこだわり、無駄なく完璧に織り込まれながら物語が構成されていることに気づき、私は声を上げるほど鳥肌がたった。その感動を語りたいのだ。『密会』は、実に完成度の高い名作なのである。

『密会』OST。一度聞いたら忘れられないドラマのBGMや、2人のセリフが要所要所に入り、臨場感迫るOST。名場面のクラシック音楽もあり、ファンならぜひ持っていたい1枚!
密会のクラシックアルバム2枚組。選曲が素晴らしい。残念ながら韓国語版なので解説は読めなかったが、ユ・アイン ファンの「akkaの窓」さんのブログで、解説を訳してくれていた。この解説がまた素晴らしい。「akkaの窓」さんのようなファンは本当にありがたい。コマウォ~!!とてもいいブログなのでぜひご覧ください。 https://ameblo.jp/akka1022/entry-11867806451.html?frm=theme

「リヒテル」に出会うまでのあらすじ

『密会』は、天才ピアニストの物語のため、演奏シーンにはかなりのリアリティが追求されている。その演技が完璧だからこそ、ドラマのクォリティの高さが成り立っている。主役のユ・アインとキム・ヒエは、演奏シーンに並々ならぬ努力を積み重ねて練習していったようだが、その話はまた別の機会としたい。今回は、ソンジェ(ユ・アイン)のモデルとも言われる「リヒテル 」について語りたい。スヴャトスラフ・リヒテル(1915-1997) は、20世紀最高のピアニストの一人と称されている、ロシアのピアニストだ。ほぼ独学でピアノを始め、ピアノコンクールで優勝し頭角を現していった。『密会』では、リヒテルの演奏スタイル、生き様が、至る所でドラマの構成・演出に影響を与えているのだ。

ソンジェ(ユ・アイン)がどん底にいる時に、ヘウォン(キム・ヒエ)が彼にリヒテルの伝記を送ったことで彼を救い、ソンジェ(ユ・アイン)の心が急激にヘウォン(キム・ヒエ)に接近してしまうのだが、そこに至るまでのドラマのあらすじを語ることにする。

ドラマは、バイク便の配達員をしていたソンジェ(ユ・アイン)が、大学のピアノ教授であるヘウォン(キム・ヒエ)の夫に荷物を届けにいったところから始まる。ヘウォン(キム・ヒエ)は、有望なピアニストであったが腱鞘炎が原因でピアニストを断念し、現在は財閥系大学のグループであるアートセンターの企画室長として働いている。ソンジェ(ユ・アイン)は、リハーサルに立ち会っていたヘウォン(キム・ヒエ)を偶然に覗き見て、心を奪われる。誰もいなくなった舞台で、ソンジェ(ユ・アイン)は衝動にかられ、ピアノに触れて演奏をしてしまう。彼は独学でピアノをマスターした才能の持ち主だった。この演奏がヘウォン(キム・ヒエ)の夫の目に留まる。夫は優秀な人材を弟子にしたいと探しており、ヘウォン(キム・ヒエ)にソンジェ(ユ・アイン)の才能を見極めて欲しいと、彼を自宅に呼ぶ。

目の前に、自分が惹かれた女性が現れてソンジェ(ユ・アイン)は動揺する。はじめてソンジェ(ユ・アイン)の演奏を聞いたヘウォン(キム・ヒエ)は、荒削りながらその才能に魅了され、それが独学だったことに驚く。何曲かを弾き、最後にヘウォン(キム・ヒエ)に、一緒にシューベルトのファンタジア(シューベルト:四手のための幻想曲D.940)を連弾して欲しいとお願いする。覗き見したリハーサルで学生と教授が弾いていた曲だ。二人が横に並び、息もぴったりにドラマティックに、恍惚とした表情を見せながら弾く姿は、演奏がこれほど艶かしいかと、息を呑む。二人の危険な関係が始まることを予測させる名場面だ。この曲は、1928年シューベルトが死去する年に作曲され、恋心を抱いていた女性に捧げられたものだ。

後日ソンジェ(ユ・アイン)は、チャットで知り合った兄貴に(実はその相手がヘウォンであることをソンジェは知らない)心を奪われた大人の女性の話をする。「魂を奪われ、心も体そっくり持っていかれた感じだ」彼女と一緒に弾いたファンタジアは「絶頂そのもの」「童貞だからわからないけど、実際に経験してもあれ以上の経験はない」「俺は女神に全てを捧げた」と、興奮気味にチャットする。20歳の童貞のソンジェ(ユ・アイン)が、ヘウォン(キム・ヒエ)にのめり込んでいく背景がここで映し出される。

ソンジェ(ユ・アイン)の才能を認めたヘウォン(キム・ヒエ)と夫は、ソンジェ(ユ・アイン)に大学への入学をすすめ、彼を自宅に寝泊まりさせながら指導をした。ところが入試の当日に、彼の母親が交通事故で亡くなるという悲劇に見舞われる。最愛の母を失った彼は、なにも見えなくなり音楽も捨て絶望に陥っていた。そこにヘウォン(キム・ヒエ)から送られてきたのがリヒテルの激動の人生を綴った本『リヒテル』だった。それはあまりにもどん底にいたソンジェ(ユ・アイン)と共通するものがあった。この続きは次回に・・・