MESSAGE

Textile-Treeは、
テキスタイルを愛する人たちのサイトです。

私たちは「日本の染織品」が、
世界の中でいかに特異な存在であるかを、
ほとんど知りません。
古代の人々にとって色彩は「美」というよりも、
外敵や病気、悪霊から身を守るための
「祈り」であったこと。
薬草から選ばれた草木染めの色は、
薬草に宿る霊能が、病気や苦痛を取り除き、
悪霊を退ける作用があると信じられていたのです。

古代より女性にとって機織りは重要な仕事でした。
「古事記」には、神様に捧げる布を織っていた
天服織女(あめのはたおりめ)のことが 書かれています。
現在も上質な「麻」や「絹」は、
神聖な布として神様へ捧げられています。
日本古来の機織り機のたて枠は
「鳥居」の形をしているのをご存知ですか。

まだ洋服が一般的になっていない「きもの」の時代、
日本人は自分たちが身につけている衣服を
とても特別なものと考えていました。
身分の高い人は、供養のため故人の衣装を
寺社に奉納しました。
農民は祖父母・両親・子へと受け継がれた
継ぎ接ぎだらけの「ボロ」を大事にしてきました。
貧しかっただけではなく、
ボロには人の思いや願いや物語があり、
そこに大きな意味と価値を見出していたからなのです。

日本の染織品には日本文化が凝縮されています。
しかし、ものが溢れる今の暮らしで、
どれだけ思いを馳せることができるでしょうか。
衣服を含めた染織品(テキスタイル)に
「心」を感じている方がどれだけいるのでしょうか。

「ものには心があります」

「心がつながる」テキスタイル文化を取り戻すためにも
大量に生産し、使い捨て消費する時代に、
終わりを告げなければなりません。
それがテキスタイルを愛する人たちの
願いでもあります。

2020年8月