「ちりめんの里」で知られる、京都・丹後産地の
織物メーカー19社が、東京・代官山で産地の素材展
「タンゴ ファブリック マルシェ」を開催しました。
緻密でスキのない高度なテキスタイルが多い展示会の中で
一際目を惹いたのは、節のある粗野な糸で織られたテキスタイル。
それは藤の蔓の皮で織った「藤布(ふじふ/ふじぬの)」でした。
織ったのは「遊絲舎(ゆうししゃ)」。
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0140-1.jpg)
・・・・「藤績み(ふじうみ)」の実演も行われていました。
「藤績み」とは、藤の表皮を細かく剥いて手で績み(繋ぎ)
長い糸にしていく作業のことです。後ろにあるのが織った「藤布」・・・・
「藤布」は、縄文時代より織られていた“原糸の布”ともいわれる織りです。
藤は日本では広く分布しているため、
手軽な繊維として各地で織られていましたが
綿が栽培されるようになってから急激に衰退。
木綿の栽培が難しい山間部などにわずかに残るのみとなり、
今では丹後が「藤布」を唯一織リ続けている希少な産地となっています。
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0144.jpg)
・・・・「藤布」は藤の蔓の皮(中皮)を剥ぎ、乾燥させたものを用います・・・・
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0141.jpg)
・・・・「藤績み」して、長い糸状にしたもの・・・
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0157.jpg)
・・・・藤の繊維のラフ感がいっぱいの「藤布」・・・・
「遊絲舎」の前進は、明治中頃創業した
丹後ちりめんの織物メーカーでしたが
現代表である小石原将夫さんが80年代に、
日本から消滅したと思われていた藤布の存在を知り、
帯地や着物地などで現代の織物として蘇えさせました。
多くの賞も受賞し、昨年はパリで開催された『プルミエール・ビジョン』の
世界の匠工房13社を集め話題となったエリア「メゾン・デクセプション」に
招待展示されています。
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0146-1.jpg)
・・・・父と同じ藤織りの世界に入った小石原充保(こいしはら みつやす)さん・・・・
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0143-1.jpg)
・・・・藤の表皮を細かく剥いたもの。米ぬかを付けながら「藤績み」をします・・・・
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0156.jpg)
・・・・粗野な藤の皮の「藤績み」は手が荒れるかと思いきや、
「米ぬかを付けてやるので、逆に手はとてもきれいになります」と
きれいな手を見せていただきました・・・・
現在は小石原将夫さんの息子さんの充保さんも
父の後を継ぎ、今回の展示会でも「藤績み」の
実演パフォーマンスを見せるなど、頼もしい活躍をしていました。
「遊絲舎」が織る「藤布」は、藤糸と絹糸を交織した帯地が中心ですが
和紙糸と交織したもの、ショールなど新しい試みも行われています。
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0149.jpg)
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0154.jpg)
・・・・絹糸との交織。生成りの部分が粗野感があらわれている藤糸・・・・
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0153.jpg)
・・・・和紙糸と藤糸を交織した「藤布」・・・
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0151.jpg)
![](https://textile-tree.com/wp-content/uploads/2012/11/DSC_0150.jpg)
・・・・シンプルでモダンな帯地・・・・
「遊絲舎」は、来年2月に行われる『プルミエール・ビジョン』にも
出展が決まっているようです。
「オンリーワン」の強みを見せ、
今後ますます注目されるメーカーになりそうです。
【Textile-Tree/成田典子】