和テイストのライブステージ「春はハイカラ」
2023年2月3日(金)・4日(土)「表参道ラパン・エ・アロ」で、ロネ&ジージのライブステージ「春はハイカラ」が開催されました。ロネ&ジージのステージに伺うのは4回目ですが、今回は今まで見たことのない「和テイスト」。笑いの中に、しっとりとしたロマンスが盛り込まれ、ちょっと色っぽいシーンも。そしていつもはボケ役のロネが、素晴らしい和芸を披露したことに本当に驚きました。やはりこの二人、只者ではありません・・・
ロネとジージchannel
https://roneandgigi.com/






クラウンは「芸達者」が、当たり前
ロネ&ジージの舞台では、ジャグリングなどの曲芸や、手品、タップダンス、パントマイム、楽器演奏など、さまざまな芸を披露しながら、面白おかしく物語を進めていきます。今回の「春はハイカラ」は、より演劇性を高めたもので、しかも和テイスト。老舗旅館「桜館」の6代目女将「ジジ江(ジージ)」に恋している「ロの助(ロネ)」の物語です。

開演冒頭、ロネの三味線から入ります。これがなかなかのものなのです。何をやらせても下手くそで、最後は見事に成功!というのがお決まりのロネとは、ちょっと趣が違うようです。ちなみに演奏しているのは「浦島」という長唄。浦島伝説をもとにしたもので、竜宮城を離れ、会えない乙姫を恋しく想う浦島太郎の心情を表した唄のようです。聞くところによると、ロネは随分前から三味線や長唄をやっており、その腕前は相当なものらしいです。


物語の途中には、ロネの恐ろしく長い台詞が出てきます。愛用している「FRISK」を熱く語るシーンで、これは歌舞伎十八番のひとつである「外郎売(ういろう うり)」という有名な台詞のようです。早口で一気に言っても8分程度かかるというもの。本来の「ういろう」は、和菓子ではなく、口の中が爽やかに、なめらかになるという薬のこと(まさにFRISK!)です。暗記するのも大変だし、息も切れます。いつ拍手していいのか戸惑うくらい、見る側も緊張する長い長い台詞でした!こんな芸を披露する主役級のロネも初めて見ました。


どこまで芸の奥行きが深くて広いのかと、感心してしまいますが、ロネ&ジージに言わせると「クラウンは芸があって当たり前、多才が前提」なのだと。それをサラリとやって見せたり、わざと下手に見せたりするのがクラウンなのです。舞台のための演劇等の稽古に加え、様々な芸を維持したりスキルアップするため、そして体力づくりのための日々の地道なトレーニングは欠かせません。本当に頭が下がります。
飲食できるリラックスしたクラウンライブ
ロネ&ジージが本領を発揮するのは、お客さまと一体になれる小さなライブスペースです。「表参道ラパン・エ・アロ」は、椅子だけを並べると100人くらい収容できますが、ロネ&ジージは、飲食ができるリラックスした雰囲気で楽しんいただきたいと(欧米ではそういうスタイルが多い様です)、テーブル席にして客数を35人に制限しました。こんなに近くで、お酒を飲みながら(しかも飲み放題!)楽しめるなんて、申し訳ないくらいの贅沢です。




手話通訳やデフ俳優による舞台手話のハーモニー
嬉しいことに、音楽はピアノの生演奏、ステージには手話通訳さんがいます。今回はさらにデフ俳優さん(ろう者・難聴者の俳優)による舞台手話が取り入れられています。デフ俳優さんは、表情がとても豊かです。ロネ&ジージの公演は、ほとんどセリフを喋らないので、デフのお客様にも楽しんでいただけていました。しかし、もっと音楽や物語を楽しんでいただきたいと、2013年から手話通訳さんが参加するようになり、2022年からはデフ俳優さんも加わりました。こうしてみなさんがクラウンの一員の様に、多角的に舞台を豊かにしているのが実に見事です。



誰も傷つけないクラウンの笑い
最近は「クラウン」「ピエロ」と聞くと、映画の影響で“怖い!”というイメージを持ったり、「サーカスの道化師ね」と、子供が喜ぶコミカルな芸人と思われてる方も多くいます。しかし、一度でもクラウンライブに足を運ぶと、子供はもちろん、この楽しさに大人がなんと癒されるのかと感動し、ファンになるはずです。
ロネ&ジージは、クラウンを一言でいうと「さまざまな演技の型を使い、傷つけない笑いを生む短い演劇」といいます。見る人が不愉快にならない笑いなので、年齢、性別、国籍、人種、容姿、貧富、障がいの有無などにかかわらず、楽しむことができるのだと思います。






欧米ではコメディ・アーティストとしてリスペクト
欧米ではクラウンは、歴史や伝統のある表現芸術のひとつに位置付けられ「コメディ・アーティスト」としてリスペクトされています。しかし、残念なことに日本ではクラウンが正しく理解されていません。それは「本当のクラウン」が少ないからであり、クラウンライブに接する機会が少ないからだと思います。ロネ&ジージは、日本にクラウンの素晴らしさを普及させようと、30年以上に渡りライブステージはもとより、後進育成のクラウンの教育活動も行っている、日本でもトップクラスのクラウンなのです。ロネ&ジージが主宰する演劇集団「オープンセサミ」では、高齢者施設や幼稚園などへの出張パフォーマンスも積極的に行っており、大好評です。
オープンセサミの活動はこちら!
http://op-sesame.com/


クラウンはダイバーシティの時代が求めるアーティスト!


ダイバーシティ(多様性)が推進される時代になり、性的マイノリティ、聴覚障がい者、自閉スペクトラム症やサヴァン症候群、ダウン症などの方が主役になる映画やドラマが、高い共感性を得て人気となっています。まさに多くの障壁を超え、誰も傷つけない笑いを生み出す「クラウン」こそ、ダイバーシティを目指す時代に必要なアーティストです。「多賀あさひや」の店主・井上和子さんは、ロネ&ジージの大応援団で、毎年11月には彼らのライブ公演を行なっています。私も多くの方にロネ&ジージのことを知っていただきたいと思っています。彼らは確実にわたしたちに「幸せなキモチ」の時間を届けてくれるのです。