素材の話

和風タペストリー「衣桁掛け」

衣桁掛け

先日縮緬の中に隠された「渋札(しぶふだ)」をご紹介しましたが、その所有者である赤井さんがお持ちのたくさんの着物や反物、端切れの中からまたしても珍しいものを発見しました。「衣桁掛け(いこうかけ)」というものらしいです。(写真上)私も初めて拝見しました。
「衣桁(いこう)」はタペストリーのように着物を広げて掛けておくものです。釘はいっさい使わない組み立て式で、鳥居のような形の「ついたて式」と、屏風のような「折りたたみ式」があります。

鳥居のような「ついたて式」の衣桁
屏風のような「折りたたみ式の衣桁

「衣桁掛け」は、普段着物を掛けていない時にタペストリーのように掛けていたようです。日本人は鏡台はもちろん、タンスにも覆いを掛けて暮らしていました。実用と観賞の独特の暮らし方ですね。そういえば昭和30年代はテレビにも覆いが…
「おそらく、漆や蒔絵などのついた高価な衣桁をお持ちの裕福な家では、こんな雅なものを掛けて楽しんでいたのでしょうね…」と、これを見た友人がメールをくれました。着物の柄と同じように、「衣桁掛け」も季節に合わせて替えたりしていたようです。「衣桁掛け」は、着物をアレンジして作られたのだと思います。着る機会が無くなった着物をこうして、タペストリーにして楽しむ、本当に風雅な習慣です。

美しい着物を再利用して衣桁掛けに
友禅染に刺繍が施されています

昔の着物は、生地がずっしり、しかしふっくらした感じがあり織りや染めも本当に手が込んだ細やかさを感じます。所々に入れた金糸や銀糸、立体的な刺繍の職人仕事に感動です!

これらのたくさんの着物をお持ちの赤井さんは4月17日(日)にmother dictionaryの「春の会」に「KOFU(古布)」のブランドで出展します。
私も取材に伺いますがご興味のあるからはぜひ覗いてみてください!