素材の話

キャサリン妃のウエディングレースの話【VOL.1】


ロイヤルウエディングは自国の伝統文化や
経済の活性化に貢献することも大きな役割のひとつです。
ウエディングドレスは
単なる個人の好みだけで選ぶことはできないのです。
自国のデザイナーが採用され、
自国の素材や伝統技術を取り入れて
王室伝統のモチーフや
代々受け継がれてきたアイテムなどを身につけるのが
「ロイヤル」たるステイタスになるのです。

キャサリン妃のドレスは
1981年にロイヤルウエディングを行ったダイアナ妃と
よく比較されます。
ダイアナ妃の時代はバブリーな80年代を象徴するような
ゴージャスで華やかなウエディングドレスでした。
袖やスカートが大きく膨らみ
ドレスのトレーンの長さも7.62mあります。
ティアラは、実家のスペンサー家に伝わる
「スペンサーティアラ」。
17世紀に作られたもので、結婚持参品のひとつです。
まさに「お姫様」の夢を乗せたドレスでした。

これに対しキャサリン妃はとてもシンプルな
ほっそりしたウエディングドレスです。
トレーンの長さも2.7mとかなり短めです。
「皇太子妃」となるダイアナ妃と
皇太子の息子の「王子の妃」という、立場の違いもありますが
大不況の時代の結婚式ですので
華美にしないという、それなりの配慮もあります。
キャサリン妃が貴族出身でなかったこともあり
「庶民性」ことばが盛んに使われました。
ティアラはエリザベス女王からお借りしたものです。
1936年に作られたカルティエのティアラで
女王の父ジョージ6世が妻に贈り、
エリザベス女王18歳の誕生日にプレゼントされたものといいます。
いずれも由緒正しきティアラです。

実はイギリスの大不況の時代に行われた
もうひとつのロイヤルウエディングがあるのです。
1840年ドイツのアルバート公と結婚した
ヴィクトリア女王のロイヤルウエディングです。

重厚なロイヤルウエディングの慣例とは違う
ゴージャスでありながも可憐なスタイルが打ち出されました。
現代のウエディングスタイルの原点となった
白のウエディングドレスや、ウエディングケーキなどは
ヴィクトリア女王のロイヤルウエディングが起源なのです。
この話しはまた別の機会に書きたいと思います。

ロイヤルウエディングにとって
「レース」はとても重要な意味を持ちます。
宝石にも等しい優美な手工レースは
歴史をも揺るがすほどで
かつては国の基幹産業でもあり
レース産業は国策として保護されてきました。
ヴィクトリア女王はドレスやヴェールに
英国の「ホニトン・レース」を採用し
以後これが英国王室御用達のレースとして
娘たちのウエディングドレスなどにも受け継がれる
英国王室の伝統レースとなりました。

今回キャサリン妃は身につけていたのは
このホニトン・レースではなく
アイルランドの伝統的な「カリクマクロス・レース」です。
「カリクマクロス・レース」はダイアナ妃のウエディングドレスにも
使われていたレースで、これもヴィクトリア女王時代からの
英国王室の伝統レースのひとつです。

次回はこの「カリクマクロス・レース」についてお話しします。