NHKの「小さな旅」
「雪の機(はた)~新潟県南魚沼市~」(3月9日放映)で
江戸時代ベストセラーとなった
『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』と共に
豪雪の新潟県南魚沼市で織られる
「越後上布(えちごじょうふ)」を紹介していました。
・・・・雪かきの様子や雪中歩行の用具の挿絵。『北越雪譜』より・・・・
『北越雪譜』は江戸時代に南魚沼市塩沢で
「縮(ちぢみ)」の仲買商や質屋などをし、
随筆家でもある鈴木牧之(すずきぼくし)によって
書かれたものです。
江戸に商いに来ている時、雪を珍しがる人たちを見て
雪国の話しを書いたら大当たりしました。
特に魚沼の名産品である
「越後縮(えちごちぢみ)」の事を書いた項目が
充実しているようなので、
興味を惹かれ早速購入してみました。
挿絵や現代語訳などもあるので
(ネットで検索もできます)かなり面白く読めました。
そこには日本の織物の原点があるような気がしました。
・・・・越後上布。NHK「小さな旅」の映像より・・・・
「上布」とは、夏の麻着物地の最高級品とされる麻織物で、
苧麻(ちょま/からむし)を原料にしたものです。
越後地方(主に小千谷市、十日町市、塩沢町)で
生産するものは特に「越後上布」と呼ばれます。
かつては「越後布(えちごぬの)」と呼ばれていたようですが、
昔の地元では単に「布」と呼ばれていた事を
『北越雪譜』を読んで知りました。
だんだん評判が上がるにつれ「越後布」「越後上布」と
名前が付けられブランド化していったのでしょう。
・・・・越後上布と、原料の青苧(あおそ)・・・・
「越後上布」の中でも糸に強い撚りを掛けて(強撚糸)
「縮み」を出した織物を「越後縮」といいますが、
総称して単に「縮(ちぢみ)」とも呼ばれています。
現在は、小千谷(おぢや)地区で織られる
「小千谷縮(おぢやちぢみ)」がよく知られています。
越後上布は、苧麻の繊維
(これを青苧《あおそ》といいます)を糸にしてから
織り上がるまでの工程は大変な手間と時間がかかります。
現在も昔ながらの手法で作られているものは、
国の重要無形文化財の認定を受けています。
・・・・小千谷縮/2014年2月「GIFT SHOW」にて・・・・
越後上布は、苧麻の皮を剥いだ粗繊維(青苧)を
「苧績み(おうみ)」という
さらに裂いて縒(よ)って糸にしていく作業をし、
その後いくつかの工程を経て織り上げます。
織り上げた布は洗い上げ、
雪の上に布を並べて太陽に晒(さらす)す
「雪晒し(ゆきさらし)」という作業が行われます。
オゾンの酸化作用で白はより白くなり、
色物は色が冴えてきます。
これは、越後上布独特の晒しの手法です。
苧績みから始めて、織り上げ、雪晒しの作業までは
すべて雪の季節に行われます。
苧麻を原料に、とても細い糸にして織り上げる越後上布は
天然の湿り気がなければ切れやすいため、
まさに豪雪地帯が生産地として適しているのです。
織り手は湿度を保つために
暖房のない凍てつくような部屋で
辛抱強く織り上げていくのです。
・・・・雪晒しの風景の挿絵。『北越雪譜』より・・・・
『北越雪譜』の有名な一説があります。
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「雪中に糸となし、雪中に織り、
雪水に洒(そそ)ぎ、雪上に曬(さら)す。
雪ありて縮(ちぢみ)あり、
されば越後縮は雪と人と気力相半(あいなかば)して
名産の名あり。
魚沼郡(こおり)の雪は縮の親といふべし。」
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(越後縮は)雪中に糸をつくり、雪中に織り
雪水で洗い清め、雪上で日に晒す。
雪があってこそ縮がある。
越後縮は雪と人と気力が補いあって
はじめて名産品といえる。
魚沼郡の雪は縮の親というべきものである。
雪国の人は雪に閉ざされた極寒生活に耐え忍ぶ
心棒強さがあります。
中でも越後人は粘り強さと丁寧さががあるといわれます。
そういうすべての条件が揃ってこそ、
この「越後上布/越後縮」が生まれたといえましょう。
次回は「御機屋(おはたや)」についてお話します。
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「越後上布」は
『テキスタイル用語辞典』のコラムでも紹介しています(027P)。
【Textile-Tree/成田典子】