素材の話

着物職人の試作品?匠の技の超レプリカ?

KOFU(古布)の赤井さんから、
またしても珍しいものを送って頂きました。
一見、豪華な着物を広げているように見えますが
これは反物に右半身、左半身を着物の形に染め抜いたものを
縫い合わせ、1枚の生地にしたものです。
よく見ると、白い線で袖やおくみ、衿の部分を描いているのが
お分かりかと思います。

横幅が約80cm、縦が約1mくらいあります。
実際の着物よりは縮小されていますが
全体のバランスからみると
着物の柄が大きいような気がしますので
柄部分は現物と同じものなのでしょうか。

染めも刺繍も見事で
こんな豪華な着物をどなたが御召しになったのかしら…と。
いつの時代のものかは分かりませんが
かなり柄は、古い時代のような気がいたします。

先日、能の衣装を複製した生地を見せて頂きましたが
(これも近々ご紹介します)
この生地も、何かの衣装を複製するために
着物職人さんの手で作られた試作品なのでしょうか。
それとも、素晴らしい作品を作った記念として
その複製をこうして手元に残しておこうとしたのか…
真意は赤井さんもご存知ないようです。

このような豪華な着物作りは
たくさんの職人さんの手によって完成されます。
創案・図案から始まり、絵を描く人、絞りを入れる人、
友禅工程でも型付け、染め、蒸し等の工程を経、
さらに手描き友禅工程をして、装飾工程では
金加工、刺繍等が施されるという具合に
伝統技術を受け継いだ職人さんたちの力で
ようやく絢爛豪華な着物が出来上がります。

しかし、手元から離れてしまえば
自分たちはなかなか見ることはできません。
もしかしたら、匠の技が結集した総合芸術を、
後生のために残しておこうとしたのかもしれません。
そうだとすれは、すごいレプリカです!

【Textile-Tree/成田典子】