この時期、いつもはコレクショントレンドを追いかけているのですが
今年は『テキスタイル用語辞典』制作もあり
「素材一筋」で資料や取材、ネットの世界を行き来しています。
そういう中で見えてきたのは
「時代は本物志向」に向かっているということです。
「かわらぬ価値を持つ…普遍的なモノや人」に
価値観がシフトし始めているように思えます。
(おそらくファッションだけではないでしょう)
アメリカンワークウエア、ミリタリークロージングが輝き始め
「作業着」「軍もの」「アウトドア」「トラッド」などの
プロトタイプの素材やアイテムが掘り起こされてきています。
おそらくレディスにも影響が出てくるでしょう。
軍服素材のアーカイブ、NASA使用の素材、ジュート素材、グローブレザーなど
無骨なものが、着込まれ、使い込まれてこそ
“いい味”が出てくる…
そこに惹かれているのです。
そういう「物語」に惹かれるのです。
今シーズンの素材展や展示会でも
本物志向を反映し、「素材の本物性」をそのままをブランドとして
打ち出しているメーカーがありました。
「株式会社 根来」で展開している「ハリス・ツイード」のブランドです。
ご存知ハリス・ツイードは
スコットランドのハリス島で伝統的な手法で織られている
「キング・オブ・ツイード」と称される
がっちりとした最高級ツイードです。
厳しい品質基準をクリアしたものにのみ
「ケルト十字」をモチーフにした商標マークがつけられます。
「株式会社 根来」は知名度の無いブランド名をつけるより
「ハリス・ツイード」そのままの方がインパクトがあると
このケルト十字の商標マークをそのまま使用しました。
本来は「ヒース・カラー(ヘザー・ミクスチャー・カラー)」と呼ばれる
植物のヒースで染められた独特の色合いが特徴ですが
このオレンジやピンクのハリス・ツイードは
なんと鮮やかでカワイいこと!
素材もケンピ入りやチクチク感は残しながらも
ウエイトは軽くしています。
重くハードなイメージのハリス・ツイードが
70年代の「ハマトラトラ」のようにアレンジされているのが
今までにはない新鮮なイメージです。
もうひとつの伝統素材は
「ミラレーン」のワックス・コットンです。
オイル・クロスともいい
世界初の防水生地として1880年に開発されました。
ワックス・コットンのタグがそのまま商品に使われます。
ハリス・ツイードの帽子やマフラーなどは
ラルフ・ローレンを作っている中国の工場で
靴はバングラディッシュ、雑貨はタイと
インターナショナルなもの作りです。
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「素材のブランド力」「素材の本物力」を利用し
そこに新しい感性を付加したモノ作り…
新しいビジネスモデルとしてこれから応用されていきそうです。
世界中の「歴史や伝統ある本物」の技術や素材とのコラボは
プラダでも新しいプロジェクトとして始められているようです。
『Free & Easy』3月号では「年を取るほどカッコいい男」を
「DAD’S STYLE」として特集していました。
「カッコいい」価値観に異変が起きているようです。
知識と経験に裏付けられ、本物の価値を知っている
「大人文化」の時代がようやく始まるのかもしれません。