『テキスタイル用語辞典』の執筆は思わぬ発見もあり、
本当に楽しい作業です。
何気ない流行も、歴史を知るとまた見方も変わってきます。
ファッションのトレンドでは数年前から
ストライプやボーダー、アニマル柄の人気が続いています。
2011春夏のコレクションでもパリ、ミラノ、NY、ロンドン
そして東京の多くのデザイナーが、いつもより増して
ストライプ、ボーダー、アニマル柄を提案しています。
ジル・サンダーはカラフルなエレクトリック・カラーと
大胆なボールド・ストライプです!
http://www.style.com/fashionshows/complete/S2011RTW-JLSANDER
ジュンヤ・ワタナベはすべてボーダー&ストライプです。
http://www.style.com/fashionshows/complete/S2011RTW-JNWATNBE
プラダは「ラテン・バロック」のマルチカラー・ボーダーです。
http://www.style.com/fashionshows/complete/S2011RTW-PRADA
ストライプ(縦縞)もボーダー(横縞)も日本名では「縞」といいますが
実はこれがとんでもないルーツを持っていたのです。
縞模様の服といえば思い起こすのは囚人服、強制収容所、旅芸人や道化師
船乗り、ルネサンス期の肖像画、フランス革命のロベスピエール…
ミシェル・パストゥロー『縞模様の歴史ー悪魔の布』は
縞模様の歴史を書いたとても面白い本です。
中世では縞模様は排斥された者たち…私生児、農奴、受刑者
ハンセン氏病患者、異端者などに着せられた服なのです。
明らかに「区別」するために「縞」が用いられました。
「縞」は、軽蔑的・悪魔的な意味をもっていたとされます。
しかし時代とともにその性格も変わってきますが
「革命」「反骨」などの要素のある柄とも分析しています。
とても奥の深い柄なので一言では語れませんが
興味深い写真ビジュアルもあり、読みやすい本ですので
ぜひ一読を!
また面白いことに、ここ数年人気が続いている
ボーダー、ストライプ、水玉、チェック、そして幾何柄ですが
実はこれらの柄が大流行した時代があるのです。
そう、それは1929年の世界大恐慌の影響を大きく受けた1930年代です。
お得意様のアメリカマーケットが失われ、
織物産業も不況に見舞われました。
高価な商品が売れなくなったため、手の込んだ複雑な柄よりも
簡単で安価に作れる単純柄に業界はシフトしていったのです。
当時マチス、ピカソ、ブラック等の抽象芸術が脚光を浴びていた事も
幾何柄などのモダン柄人気につながったようです。
歴史は繰り返すのでしょうか。
流行する色や柄にも「性格」があるようです。
そういうことを知って身につけると良いかもしれませんね。