編集長ブログ

キャンドルを灯したくなった映画『大停電の夜に』

昨夜(12月19日)J:COM TVで放送されていた『大停電の夜に(2005)』を観た。大好きな豊川悦司が出演していたので、何気なく視聴予約を入れておいたのだが、最初から最後まで見入ってしまった。最近韓流にはまっている私が、日本の映画やドラマを最後まで見ることは少ない。心を癒してくれる、好きなタイプの映画だ。

映画のタイトルからして、大停電のパニック映画かと思ったら全く逆で、オムニバスのラブストーリーだった。クリスマスイブに東京全域が突然停電になり、夫婦、偶然あった男女、ご近所さんの男女など、それぞれのカップルがそれぞれの物語を紡いでいく。電気の消えた夜は、自分でも気づかなかった特別な感情を引き出してくれた。悩みを抱えていた人生が、キャンドルの灯りや星空の明かりの下で優しく癒されていく。忘れていた美しいあかりだ。キャンドルの灯りが、この上もなく美しく、映画を観ながら思わず電気を消してキャンドルを灯したくなった。「マッチ売りの少女」を少し彷彿させる、クリスマスの優しいプレゼントのようだった。映画はただのオムニバスではなく、最後にそれぞれがつながっていることがわかり、答えに導いてくれる。映像も音楽もなかなかオシャレな、大人のファンタジーともいえる映画だった。「until the lights come back」の英タイトルもいい。

監督は誰かなと思ったら、、、源 孝志。なんとあの江國香織 原作の『東京タワー Tokyo Tower(2004)』の監督だった。私が大好きな韓流ドラマ『密会(2014)』も、江國香織のこの小説が原案とされるため、小説は読まなかったが、源 孝志監督の『東京タワー Tokyo Tower(2004)』を観た。黒木瞳、岡田准一、松本潤などが出演しており、テレビドラマ出身の源 孝志監督の映画デビュー作だった。『密会(2014)』とは似ても似つかぬもので(『密会』の方が原作とはかなり違っているが)、同じ小説を原案にしてここまでレベルが違うものかと、がっかりしたのが正直な感想だった。このことは、私の韓流ブログ「愛してやまない、ドラマ『密会』Vol.6/ブラームスに張られた伏線」にも書いた。しかし2作目の『大停電の夜に(2005)』をここまで美しく仕上げたのは見事だ。いい役者を贅沢に使っているという違いはあるかもしれないが、、、源 孝志監督の他の映画も見たくなった。

【Textile-Tree/成田典子】