弘子姉さんが初めて挑んだ「デニムの布絵」をご紹介します。
昨年5月にJR西日本が主催するデニムのイベントが
京都と大阪駅であり、そこに出展するために制作した作品です。
写真は、まだ制作途中のものですが
ほとんど完成品に近いものですので、雰囲気は伝わると思います。
『鯖街道 熊川宿(さばかいどう くまがわじゅく)』
2010年制作(ヨコ140×タテ120cm)
デニムを使った作品は初めてなので
今までとは勝手も違うし、弘子姉さんは心配だったようです。
何を作ろうか…と考えた時
浮かんだのが「鯖街道」「熊川宿」です。
京都と若狭は昔から縁が深く、
たくさんの海産物が京都に運ばれていました。
若狭からの大量の鯖が運ばれる道を総称して
「鯖街道」と呼ばれるようになり
その宿場町として繁栄していたのが「熊川宿」です。
これが現在の「熊川宿」です。
![IMG_3330]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3330-e1307029246933.jpg)
![IMG_3316]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3316-450x337.jpg)
弘子姉さんのおばさんが
「塩した鯖を京都に行商で運んでいた」という記憶もあり
純造兄さんと一緒に熊川宿に出かけ
写真を撮り、迷い無くこの作品に取りかかりました。
![IMG_3317]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3317-450x337.jpg)
作品の下地は1枚のデニム地を柿渋で染めたものです。
むら染めにした柿渋がいい具合に
京都へと続く「鯖街道」を表現できました。
デニム地やデニムの耳も、
染めたり繋いで縫ったりと、あちこちに使っています。
屋根瓦、石垣、町並み、人物の衣服など、
よく見るとデニム素材がわかるかと思います。
![IMG_3328]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3328-450x337.jpg)
![IMG_3318]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3318-450x337.jpg)
![IMG_3329]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3329-e1307029553154.jpg)
松の木や山には蚊帳(かや)、
のれんには酒袋を使っています。
川は絣の裂き織り、波はデニムの耳、
背負人の籠にかけてあるのは、
息子の彰規(あきのり)君が小さい時に使っていた寝ゴザです。
朝早く若狭を出発し、熊川宿で一服している背負人など、
どこかほっと和んでいる「熊川宿」が伝わってきます。
![IMG_3325]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3325-e1307029601848.jpg)
![IMG_3324]( https://textile-tree.com/wp-content/uploads/IMG_3324-e1307029419994.jpg)
このデニムの作品は弘子姉さんにとって
大きな転機となった作品です。
2年前に実母を亡くし、
長い間看病していた弘子姉さんの心に
ぽっかり穴があいてしまいました。
何事にも気力が無くなり、作品を作る気にもならず
まわりも心配する毎日でした。
その時にこのデニムの作品の依頼があり
弘子姉さんの心に「もう一度やってみよう」という
チャレンジの火を灯したのです。
弘子姉さんには、忘れられない作品になりました。
私は弘子姉さんの布絵が大好きで
いつか紹介したいと思っていました。
これを機会に多くの方に知って頂くと、
本当に嬉しく思います。