穂積和夫さんファンにはたまらない、
夢のようなクロッキー会が
10月 2日(日)・11月6日(日)の
2回シリーズで行われました。
クリエイターズソサエティーと
ASABI(阿佐ヶ谷美術専門学校)が
コラボして実現したもので、
今年86歳になる穂積さんから
直接教わることができるというので、
参加者の期待も高まっていました。
・・参加者のみなさんと記念写真!
帽子をかぶっている穂積さんの前にいらっしゃるのが
主催者の本告純子さん。その左がASABIの古川流雄先生・・
・・新高円寺にあるASABI。校舎はアート専門学校らしい
クラフト感があちこちにあり、新鮮!・・
・・クロッキー会が行われた3階のデッサン室。
屋根からも自然光が入る気持ちのいいアトリエです・・
まず、穂積さんがどれだけすごい方かご紹介します。
60年代や70年代にアイビーを経験した方でしたら
アイビーファッションの先駆者として、
『アイビーボーイ』のイラストレーターとして
よくご存知かと思います。
しかし、アイビーボーイのキャラクターを描く
イラストレーターだけではないのです。
・・2014年春号の『つなぐ通信』の表紙を飾った
穂積さん。この素敵な出会いがきっかけ!・・
・・相変わらずダンディな穂積さん。
以前、元気で長生きの秘訣は「オシャレすること」と
教えていただきました。こんな86歳、憧れます♪・・
元は、東北大学の建築学科を卒業した建築家。
長澤節に師事して絵を学んだのが
イラストレーターになるきっかけになりました。
『メンズクラブ』の正統派のメンズファッションイラストを描いたり、
車好きの方には車のイラストレーターとしても知られています。
・・ご存知「アイビーボーイ」・・
・・正統派のメンズファッションイラストや、車のイラスト、
建築まで、知識と絵のうまさは定評があります・・
また、建築で培った専門知識を生かし、
法隆寺や江戸の町並みなどをイラストで描くなど、
多岐に渡り活躍し、なんとイラストレーター歴60年以上。
まさに「レジェンド」の名にふさわしい
イラストレーターなのです。
東北大の建築学科を出て、その後建築の道を
中断してしまった穂積さんは、
国から補助のある“国立大”で学ばせていただきながら、
その知識と技術を社会で活かせなかったことに
負い目を感じていたのです。
『法隆寺』や『江戸の町』などの出版物で
建築関連のイラストを描いたことで、
「少しはお返しができたかと思う」と話されていました。
法隆寺のイラストを描くにあたり、自分で模型を作ったといいます。
今では3Gコンピュータで簡単に描けますが、
穂積さんの絵は、建築の知識やデッサン力がないと描けない
本物の絵です。
・・まるで日本画家が描いたのかと思うような
舞妓さんの絵。もちろんこれも穂積さんの絵です・・
取材したのは、11月6日。
2回目の方と初めて参加される方が
いらっしゃいましたが、ほとんどが、
現役のイラストレーターやデザイナー。
中にはスタイル画の先生や油絵の絵描きさんなども
いらっしゃいました。
なんらかの形で絵に携わっている方や、絵の大好きな方で、
現役の高校生もいらっしゃいました。
もちろんみなさん穂積さんよりは年下。
プライド(?)は脱ぎ捨てて、
リスペクトしている穂積さんから
何かを学んで行こうと、真剣。
穂積さんがどんな描き方をし、
どんな着色技法を使っているのか、
自分の描いたクロッキーを、どう評価して
アドバイスしてくれるのか・・・
そんな期待感でスタートしました。
まずはじめに、穂積さんから画板の持ち方から
説明を受けます。
「クロッキーは基本的に立って描くこと。
自分の足を三脚にして固定する。
描きたいポジションを遠慮しないで探すこと。
鉛筆は字を書くような持ち方で、
影をつけて描くのではなく、線で描いていくこと」
などが話されました。
クロッキーは、だいたい10分〜15分程度で、
休憩を挟み3時間で7ポーズが描かれました。
穂積さんは、みなさんが描いている途中から
着色に入ります。
最初に描いたこのクロッキーは、
あまりお気にめさなかったようで、
完成品にはしませんでした。
自分のサインを入れる絵は、そう多くはないと
話されていました。
2つ目も立ちポーズです。
時間を重ねると、若い方でも立って描くのが
辛くなり、座る方が増えましたが、
穂積さんは必ず立って描きます。
その立ち姿が、実にカッコイイのです。
気がついたのは、絵がうまい方は、
立ち姿もカッコイイなあって!!
きっとたくさん描いているので、
自ずと自分の立ち姿というのが
できているのかもしれません。
休憩中に穂積さんの着色がはじまり、
みなさんが周りに集まってきます。
「水彩は、引力で水が下に流れるので
着色するときは、画板を斜めにすること」
「顔を塗るときは少し暗い色を使用した方が引き締まる」
「影をつけるような塗り方はしない」
などと話しながら、着色していきます。
ずいぶん久しぶりに描いた水彩画のようでしたが、
描くほどに勘を取り戻している様子です。
モデルさんへのポーズのつけ方も
穂積さんは細かく指示します。
納得の行く美しいポーズを探しているようです。
顔は先にきちんと描いてから全体を描いていった方が
雰囲気を掴みやすいようです。
感情移入して描けるということかな?
この絵は、モデルさんの個性をとてもよく表現していて、
今回のクロッキーの中で一番好き♪
そろそろ座って描く人も増えている中、
穂積さんは相変わらずしっかり立って描いています。
肘のところなど、洋服のシワのあるところは丁寧に描き、
ストーンとまっすぐ下りているところは
勢いをつけて描くことが大事と話されていました。
この筆は中に水を入れて描く筆。
パレットもどこにもあるようなオーソドックスなもの。
5回目は、エスニックなポンチョスタイルにガラリと変身!
全部着色しないこともあります。
後でゆっくりディテールを描き込むことも
あるようです。どこまで描きこむのか
その兼ね合いが難しい・・・
グリーンの帽子とジャケットなのに、
穂積さんはパープル系に着色。
あっ、自由でいいんだ!
難しいポーズだけど、
美しいポーズに描かれています。
最後の7つ目のスタイにポーズをつけます。
さすがに穂積さんは自分で描くのは疲れたようで、
みなさんの絵をみて回りながらアドバイスを!
クロッキーの休憩時間に、
参加者のみなさんは、ご自分で描かれた絵を
穂積さんに見ていただき、アドバイスをいただきます。
上手な方だなあと思う方にも、
「あなたはモデルを見ないで、
自分のイメージで描いていますね。
もっとモデルをよく見て描いてください。
漫画家さんは、何も見ないでも
ささっと絵を描けてしまいますが、
そういう絵は、つまんないんですね」と、手厳しい。
もちろん「いいですね!
このままどんどん描いていってください」
と褒めてくれることや、
「バランスをもっと見るように」
「もっとゆっくり鉛筆を動かして描くように」
「細かな線で描くのではなく、
よく見てもっと大胆に描くように」など、
その方にあった、ワンポイントアドバイスが多い。
余計なことを言わなくても
その一言だけでグーンとよくなるようです。
最後は穂積さんと一緒に記念撮影をして、
この後は、近くの居酒屋で懇親会!
穂積さんはあまりお酒は強くないので、
1杯飲んだだけですが、
今回のクロッキーの会がとてもいい刺激になったと
喜んでいらっしゃいました。
やはり、正直86歳にもなると、
心身の衰えを感じることが多くなり、
怪我をしたり、気分が落ち込むことも増えたといいます。
外にでることが億劫になったりもするので、
こうして、自分が教える立場で
意欲ある方と接するのは、やる気が出て嬉しいと
話されていました。
体調さえよければ、ぜひ来年、少し暖かくなってから
第3弾を!と盛り上がり、楽しく終了しました。
とてもいい会を取材させていただき
ありがとうございました!
それにしても、
クロッキー描きたくなってしまいました・・・
※取材協力ASABI(阿佐ヶ谷美術専門学校)