素材の話

サステイナビリティ時代の、田中忠三郎『物には心がある。」

「素材の話」でも紹介しましたが、ぜひ読んでいただきたい一冊が、田中忠三郎『物には心がある。』です。2013年に浅草のアミューズミュージアム の『BORO』の常設展に行った時に、写真集の『BORO』と一緒に購入したものです。すでに絶版になっているようで、Amazonで見たら2冊とも定価の2倍以上の価格で販売されていました(もっと安く手に入るといいのですが・・・)。『BORO』の展覧会も素晴らしいものでしたが、田中忠三郎が収集したものは、ものだけではなく、大切なものとともに生きた人々の言葉も収集しているのです。青森の方言で語られる言葉は、まさに宝物です。

ファッション業界も「サステイナビリティ(持続可能性)」が大きなトレンドになっており、流行の垂れ流しでものづくりをすることや、大量生産・大量廃棄が問題視されるようになりました。「ものの価値とは何か」が大きく変わりつつあります。そこでふと思い出したのが、田中忠三郎『物には心がある。」でした。7年経ったいま再び読み直して見ました。そこに、私が探していた答えがあるように思いました。

ファッションの価値観を振り返ると、手づくりよりもブランド品に価値のある時代がありました。いまは作家やアーティスト、職人的なものづくり、1点ものに価値観が移っているのかもしれません。しかし、もう一歩踏み出すと、つくり手の思いや、ものづくりの背景にある物語の価値だけではなく、それを着続けた人の思いや、使い込んだものの味わい、修理したり繕ったものの味わいに、新品にはない価値を見出す人が増えているのではないかと思います。

田中忠三郎は、祖父母、両親、子へと受け継がれていった、継ぎ接ぎだらけの衣服や敷物に込められた「心」を教えてくれてます。そこには両親や祖父母の匂いや痕跡があり、自分を守ってくれる。「ボロ」には、人と人の絆を結ぶ力があり、自分は一人でないと感じられるのです。

同じような感覚が私にもあることを思い出しました。それが、母が日々の労働で使い込んだ手ぬぐいと、我が家の「ぼろ」の話です。それは次回に・・・