「第74回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2012」で
日本の伝統技術で新しいもの作りに挑戦している
メーカーさん取材の第2弾です。
『麿紋®(まろもん)』
・・・・「麿紋®」のブース・・・・
「麿紋®」は製図機器メーカー、タケダコーポレーション(株)が始めた
伝統文化事業のブランドです。
「メイドインジャパン」のもの作りを基本に、
「紋」を現代の日常着にも取り入れる暮らしを提案。
Gift Showの展示ブースでは、
セレクトプロダクツ事業部の木戸慎午さんが
自らを広告塔にしたパフォーマンスで、
多くのお客様を呼び込んでいました。
・・・・お客様の呼び込みの上手な木戸慎午さん。
軽く履きやすいとアピールする地下足袋に注目が集まって、人気者に・・・・
・・・・ちなみに、2013春夏の『プラダ』のコレクションでも
地下足袋スタイルが提案されています!・・・・
「麿紋®」は、かつて日本の暮らしにあった
「紋の文化」を復活しようと作られました。
「家紋」ばかりではなく、「個人の紋」を持ったり、
目印としての「紋」を使用するなど、
日本人は人とモノを結びつける記号として
日常に「紋」を使用してきたといいます。
・・・・すべてMade in Japanです・・・・
・・・・子供のTシャツもあります・・・・
・・・・Tシャツはパッケージに入れて販売・・・・
「麿紋®」の提案する「紋」のデザインは、
オリジナリティを打ち出した新しい「紋」です。
Tシャツを中心に、地下足袋、バッグ、ニット帽などが提案されています。
伝統的な愛知県の有松鳴海絞り(ありまつなるみ しぼり)とコラボしたTシャツや、
染め付けを京都で行い、兵庫の職人さんが作った地下足袋など、
日本の産地の特性を生かしたもの作りも行われています。
製図機器メーカーのデザイン部門のノウハウを活かした新業態に注目です。
・・・・有松鳴海絞りのTシャツ・・・・
・・・・注目度の高い、本格派仕上げの地下足袋・・・・
・・・・モノグラムのような小紋柄のバッグ・・・・
・・・・帽子にも紋が入れられています・・・・
『工房夢細工』
福岡県・秋月に工房を構える「工房夢細工」は、
草木染めによる“本物の色”を追求している工房です。
草木染め作家で染匠の小室容久さんから、
「草木染めというと、くすんだ色のイメージを持っている方が多いですが
本来の草木染めはとても色がきれいなのです」と、説明していただきました。
・・・・微妙なニュアンスの桜色で染められた「桜染め」のコーナー・・・・
きれいな桜色に染まった「桜染め(初め)」は、桜の花で染めるのではなく、
桜が咲く前の小さなつぼみを付けた小枝で染めるというから、驚きです。
小さく切った小枝を鍋で炊いたり冷ましたりを繰り返し桜色を抽出し、
さらに染液を熟成させて原液を作ります。
何カ月もの時間と熟練の技術を経て「桜染め」ができるのです。
・・・・見た目も愛らしい「桜染め」の小物雑貨・・・・
・・・・染めの回数などで微妙な色の違いがあらわれます・・・・
「柿渋染め」は、太陽の光に何日も繰り返し曝(さら)すことで
どんどん色の深みが増すといいます。
通常の染めは太陽の光で色褪せますが、
「柿渋染め」は、太陽の光で発色するのです。
・・・・「屋久杉染め」や「柿渋染め」のコーナー・・・・
「屋久杉染め」は、屋久杉の削り屑や葉を原料にしたものです。
とても手間と時間がかかるため、なかなか濃い色が難しく
今まではベージュがほとんどでしたが、
小室さんは根気よく取り組み、屋久杉の色を布に映し出すことに成功。
まさに “奇跡の色”といいます。
・・・・染めの説明をしてくださる染匠の小室容久さん・・・・
・・・・きれいな色の草木染めのニットやストール・・・・
・・・・ぼかしの草木染めストール・・・・
・・・・『MAITO』ブランドを立ち上げ、活躍が期待される小室真以人さん・・・・
小室容久さんの息子の真以人(まいと)さんも、同じ染色の道を歩いています。
東京藝術大学で染色を専攻し、伝統技法を学ぶ傍ら
草木染めなどの新しい表現を模索。
現在は天然繊維と草木染めをベースにした『MAITO』というニットブランドを展開。
東京を拠点に、日常で長く愛され続けるもの作りを目指しています。
そういう息子さんを、お父さんも誇らしげに応援している様子がうかがえました。
『笹田織物(株)』
笹田織物(株)は、明治44年(1911年)創業。
襖(ふすま)紙や壁紙用の生地を製造している奈良のメーカーです。
襖紙や壁紙は、以前は「生地張り」が一般的でしたが、現在ではほとんどが「紙」。
わずかホテルや本格派和室の高級壁紙・襖紙として採用されています。
織物は、衣類の製織ばかりではなく、いろんな分野があり、
笹田織物(株)は、襖紙や壁紙用の生地、そして蚊帳(かや)など、
“薄く、粗い織物”を得意とします。
・・・・・「やわらかストール」を展開・・・・
・・・16色展開や、ストライプ、ラメ入り、紬などのバリエーションも多い・・・・
・・・・直接ストールに触っていただくことで、その良さをアピール・・・・
襖紙や蚊帳の需要が激減してきたため、
笹田織物(株)では、“薄く、粗い織物”を得意とする
自社の持ち味を活かした織物への販路拡大を目指し、
「ストール」に目を付けました。
奈良で古くから織られてきた蚊帳の伝統技術を利用して
『やわらかストール』を開発。
エジプト綿/シルク/レーヨン混や、レーヨン100%で
ふんわり軽い、爽やかなストールに仕上げました。
・・・・シャトル織機で織り上げるため、ふんわりとした風合いでストールの端は「織り耳」を利用できます・・・・
・・・・蚊帳地の布巾は、吸水性に優れ人気です・・・・
社長の笹田昌孝さんは、4年前に就任した4代目。
新生笹田織物(株)に向けて、期待されるところも大きく
お母さんの営業にも力が入っています。
家族一緒に力を合わせてやってきた織物工場の姿があります。
笹田織物(株)は、経営理念の
「誠実をモットーにまごころをこめて信頼される物作りをします」
にも伺えるように、
この100年間は「いいもの作りをし、適切な納期・価格で納める」ことで
信頼と信用を築いてきたのだと思います。
・・・・笹田社長(右)と、自らがモデルとなり営業に熱心なお母様(中)・・・・
「お客様と一緒にもの作りしたい」「お客様の声を形にするのが生き甲斐」
という若社長の一途さと、
その研究熱心さゆえ「織りバカ」の異名もある会長の笹田宗計さんは
今の時代にはとても貴重な存在です。
小ロットや、お客様の細かな注文にも対応しています。
アパレルや小売店の方には「Made in Nara」を打ち出したもの作りを、
ぜひ一緒に協業して欲しいものです。
応援したくなるメーカーです。
『(株)かぐらや』
・・・・「畳縁(たたみべり)」のバッグを展示している『かぐらや』のブース・・・・
『(株)かぐらや』は、岡山県倉敷のメーカーです。
倉敷地区を中心とする一帯は、江戸時代頃から綿花の栽培が盛んで、
倉敷は綿花の集積地として繊維業・紡績業が発展しました。
明治から昭和にかけては、倉敷紡績や倉敷レーヨンが誕生し、
小倉帯、袴(はかま)地、足袋(たび)、ゲートルなどが生産され、
近年では帆布、学生服、そしてジーンズの生産地としても有名です。
また、畳の原料となる「イグサ」の栽培も盛んで、
畳表やイグサ製品の製造も行われ、
それにともない「畳縁(たたみべり)」の製造も発展しました。
・・・・・約8cmのテープ状の「畳縁」素材を繋ぎ合わせてバッグが作られます・・・・
・・・・先染め糸を使用した織りなので、発色がきれいです・・・・
・・・・綿素材には、畳縁の伝統的な艶出し加工糸を使用・・・・
『(株)かぐらや』は、倉敷の特産でもあった「畳縁」に着目し
オリジナリティを出した「かぐらやバッグ」を製作。
丈夫で光沢があり、発色の良い畳縁の特徴を活かし、
さらに色や素材も独自性を出して、新しい素材として開発しました。
素材は、汚れや摩擦に強いポリエチレン、ポリエステル/麻、綿など、
バリエーションもあります。
綿素材には畳縁の伝統的な艶出し加工糸を使用。
染めた糸に「艶付け加工」を施したもので、独特な艶感を出しています。
・・・・カラフル感のある畳縁のポーチ・・・・
畳縁は約8cmのテープ状のため、これを繋げながらバッグを作り上げるのは
大変だったようです。
企業秘密ともいえるノウハウは、職人さんの技で編み出され
「Made in Kurashiki」のひとつとして、岡山のファクトリーで生産されます。
・・・・ピラミッド型什器を使った「かぐらやロール」のディスプレイ・・・・
もうひとつの『(株)かぐらや』のオリジナルアイテムに
「かぐらやロール」があります。
形状も色もネーミングも可愛らしいこれは、
長さ約80cmのチューブ状のカットソーのこと。
素材は綿80%/ポリエステル15%/ポリウレタン5%のカットソーなので
伸縮性があり、カットしてもほつれにくいのが特徴。
無地やボーダー配色したものなどがあり、
半分に切ってアームカバーやレッグカバーに、
細く切るとブレスレットに早変わり。
帽子、巾着なども作ることができ、作り方を紹介した
レシピのパンフレットも製作しています。
・・・・自由に切って様々なアイテムができます。
手前にあるのはリングを繋げたネックアクセサリー・・・・
・・・・半分に切ってアームカバーとして使用・・・・・
・・・・“クラフト感覚”もあるカラフルな売り場提案が可能・・・・
くるくるロールした包装と、
場所をとらないピラミッド型什器を用いての販促提案は
売り場のちょっとしたアクセントにもなる、いいアイディアです。
バッグ売り場に「かぐらや」のコーナーとして
そのまま置いているショップも多くあるようです。
商品だけではなく、什器による販促提案、
作り方を紹介したレシピパンフの製作など、
売り方までを提案したMDが光ります。