素材の話

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.5林キルティング

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展『テキスタイル ネットワーク ジャパン(TN JAPAN』が開催されました。
2013
2014A/Wのテーマは「職の革新~糸にこだわる~」。糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

大阪・岸和田の「林キルティング」は、キルティングの可能性を広げた付加価値の高さが特徴です。代表の林千尋さんは全国を走り回り、ジャカード、刺繍、ステッチなど、優れた加工技術を持つ工場を探し当てコラボレーション。高度なテクニックを駆使した、クリエイティブなキルティングを作り上げています。


・・・・一見プリーツのようですが、“溶ける糸”を使用してキルティング技術でつくったもの・・・・

・・・・キルティングした糸を溶かすと、絞りやプリーツのように立体的な表面感となります。右はサテン、左はサテンにオパール加工を施したもの。同じキルティングでも生地により表情が違います・・・・

・・・・さらに転写プリントを施したもの・・・・

「林キルティング」は、林さんが一代で築いたもの。父親は青果業を営んでいましたが、父親とは違う職業を選びました。しかし、事業家になりたいという林さんの志を父親はバックアップ。大学を卒業後、キルティングの機械を導入し、早速操業しましたが、初めの5~6年はまさに勉強の時代だったといいます。

・・・・大学卒業後創業し約30年。すべて独学でやってきたという林さん・・・・

林さんは、全国のキルティング工場を尋ね回り技術を学び、さらに、ジャカード、刺繍、ステッチなどを得意とする工場と協業することで、キルティングのさらなる可能性を広げました。日本にはスパンコールやコード刺繍など、特殊加工に高い技術を持つ工場があります。
しかし、規模が小さいために、残念ながら発信力が弱い。そういう優れた特殊加工技術や設備をもつ工場と連携していくと他にはなかなか真似のできないオリジナリティのあるもの作りが可能になります。このコーディネート力は、全国を走り回った林さんならではのノウハウです。

・・・・ベルベットにオーガンジーを重ね、キルティング刺繍。生地の色や刺繍の仕方により、表面感が違って見えます・・・・

・・・・絞りのようなキルティング・・・・

パリのプルミエールヴィジョンにも出展し、オリジナリティのある高度なもの作りは国内外の有名デザイナーからも高い評価を得ています。林さんは、付加価値を求めるメーカーさんに向けて小ロット対応を行ったり、素材・福祉材・加工法からのアドバイスを含めた
商品開発も行っています。もちろん海外への進出にも力を入れています。

・・・・「林キルティング」のイメージブランドの『マレンコ』・・・・

・・・・一見ジャカードのように見えますが、オーガンジーを重ね、キルティング刺繍をして、あと染めしたコート。色合いが立体的です・・・・

・・・・キルティングとニードルパンチの組み合わせ。以前プラダにもこのテクニックが見られました・・・・

・・・・キルティングのパネル柄。かなり凝った柄ができます・・・・

工場を立ち上げ初めて製品ができた時、まずはともあれと、「無鉄砲にも、コシノヒロコさんの門を叩いた」そうです。コシノヒロコさんは、初めて見る林キルティングさんの生地を気に入ってくださり、それは今日まで続いています。
そういえば、コシノヒロコさんも林さんも同じ岸和田出身。もちろん林さんも生粋の「だんじり男」!岸和田の「だんじり魂」でもって、世界に大きく羽ばたいて行くことを、心より応援しております。


【Textile-Tree/成田典子】