昨年の12月23日に、八王子中野上町の
「つくるのいえ」のプレオープンイベントで
岡山の『音の絵』のデザイナーの
間野菜々江さんをご紹介いただきました。
短歌が趣味の、優しい笑顔の、
口数の少ない、楚々とした女性でした。
「つくるのいえ」のことは、また別の機会にご紹介しますが、
ここを拠点に、日本の繊維産地と連携しながら、
日本のものづくりを活性させ再生していきたいという思いで
八王子の奥田染工場の奥田博伸さんが中心となり
スタートさせたものです。
その第一弾が、岡山のものづくりの方達と、
東京のものづくりの方達とのとのコラボイベントです。
岡山のクリエーターの一人として参加していたのが
「音の絵」のデザイナーの間野さんでした。
間野さんが作っているのは、日本にほとんど少なくなった
エンブロイダリーレース(刺繍レース)の織機でつくるテキスタイルで、
西日本で唯一の刺繍レース工場である岡山の丸山刺繍(株)で
制作されたものです。
間野さんのつくる刺繍レースは、とても清楚感が漂います。
ベースになっている生地は、近江の麻や、綿ローン、
ウールガーゼなどの天然素材。
図案はイラストレーターさんやテキスタイルデザイナーさんに
依頼されているようですが、
そこには自然を愛する間野さんの世界観を感じます。
「音の絵」では生地の販売はもちろん、洋服や雑貨をデザインして販売し、
さらにオーダーも受け、間野さん自身がミシンを踏んで作られています。
そういう日々の制作の様子をfacebookで綴り
2015年に『夜中にミシンを踏みながら』という1冊の本になりました。
「つくるのいえ」のイベントの時には、ご自分がデザインされた
雑貨と一緒にこの本も販売されていましたが、
私は、購入しようか迷いながら、
ウールガーゼに吾亦紅(われもこう)が刺繍されている
ブックカバーを購入しました。
かさ高のあるふんわり優しい素材です。
あとで気がついたのですが、
この日間野さんが来ていた洋服と同じ生地でした。
本を持ち歩くのが楽しみになるくらい、とても気に入っています。
それから年が明けて、毎日手にしているブックカバーを作った
間野さんのことが気になって、
何気なく間野さんのfacebookやブログを見ました。
人柄が表れるような文章に惹かれ、
どうしてもあの時に迷った本が読みたくなり
Amazonで購入しました。
1枚の写真に短い文章が添えられているだけなので
一気に読んでしましました。
「すごいなあこの方は・・・」
人柄、つくっているもの、発する言葉、全てが一致します。
つくられるひとつ一つに物語が感じられ、
ものがこれだけ「豊かな心でつくられている」ことに
感動しました。
今の時代は、ネットでいいものをいかに安く購入するか、
購入したものをいかに高く販売するかが
あたりまえの時代になっています。
そういう購入の仕方を否定はしませんが、
本当に大切なものを購入したい時は、
「心を込めてつくってくださっている」方から
購入したいものです。
そこに込められた心にも触れたいから・・・
昔の手づくり、アンティークには
つくり手の丁寧な心が感じられました。
思い出のあるものは「最後の最後まで使い切りたい」
繕ったり、パッチワークや裂き織りなどのように、
新たな命を吹き込むのはとても楽しいことです。
“損得”だけのネットビジネスに
ついていけないなあと思っていた時に
巡り合った『夜中にミシンを踏みながら』は
お金には換算できない
「心豊かな暮らしの幸せ感」
それを思い出させてくれた1冊でした。