編集長ブログ

「MANGA都市TOKYO」展

マンガ・アニメ・ゲーム・特撮が描く東京の日常

カルチャーショックでした。普段、漫画やアニメにさほど興味がない私ですが、国立新美術館で開催されている「MANGA都市TOKYO」展のチケットをいただいたので、予備知識なしに無防備で出かけました。コミックマーケットやアニメイベントのようなイメージを抱いていたのですが、テーマは「都市 東京」であり、特撮による都市風景の技術のすごさ、江戸や東京の都市風景を描いてきた漫画家やアニメーターの素晴らしさを映し出した展示会となっていました。まさにパンフレットのコピー「マンガ・アニメ・ゲーム・特撮が描く東京の日常」でした。

この展示会のすべてが凝縮された東京のジオラマ

1/1000 の縮尺で再現された、幅約 17m長さ約 22mの東京の都市模型

会場に入ってまず、目の前に広がる巨大なジオラマに圧倒されます。1/1000 の縮尺で再現された、幅約 17m、長さ約 22mの東京の都市模型です。この展覧会のすべてがこのジオラマに凝縮されていました。ジオラマの正面の大きなモニターにはアニメや特撮などの映像が地図と一緒に映し出されます。「AKIRA(1998)ネオ東京」「言の葉の庭(2013)新宿駅』「シン・ゴジラ(2016)港区周辺」「ゴジラ(1954)国会議事堂」「STEINS;GATE(2009)秋葉原」など、次々に現れる映像は、地図に赤丸で位置が記され、ジオラマにその場所が点灯されます。「あっ、ゴジラが暴れた国会議事堂はこの辺か!」と、映像と東京がリンクして物語のリアリティさが増していきます。しばらく見入ってしまいました。

https://manga-toshi-tokyo.jp

https://www.nact.jp/exhibition_special/2020/manga-toshi-tokyo/

「ユニコーンガンダム立像」の映像が映ると、地図で位置が示され、模型のお台場の場所(画面右端)が点灯します。
「シン・ゴジラ」の映像が映ると、地図で位置が示され、模型の港区の場所(画面前方)が点灯します。
手前には新宿都庁などの高層ビル、はるか前方にはスカイツリーが見られます。

ジオラマは、欲をいうともう少しリアルさが欲しいなあと思いましたが、巨大ジオラマという発想は実に面白く、展覧会ならではの贅沢な展示は、まさにお金を払う価値があり、現場に行かなければ楽しめない企画です。

展覧会は、「セクション1:破壊と復興の反復」「セクション2:東京の日常」「2A:プレ東京としての江戸」「2B:近代化の幕開けからポストモダン都市まで」「2C:世紀末から現在まで」「セクション3:キャラクターvs.都市」にテーマ付けられ、江戸から戦後、現代にかけての東京をテーマにした作家の動画や絵コンテ、原画が展示されています。

風景描写のリアリティや叙情表現が重要な時代

絵コンテ、原画などの、映画や漫画本になる前の制作経過の展示は大変興味深く、作者や監督が、どのようなことにこだわり一コマ一コマをつくっているのかが伝わってきます。今更ではありますが、漫画やアニメの制作の奥深さ面白さをひしと感じました。しかし展示作品の解説が少なかったのが物足りなく、制作における分析や説明がもっと欲しいと思いました。

新海 誠監督の『言の葉の庭』の映像を見たときの衝撃は大きく、風景描写の美しさとリアリティに釘付けになりました。アニメーションの表現力は、人物描写や物語性よりも、風景描写がいかに重要な時代になっているかを実感。そういえば『君の名は。』が注目されたときに、風景描写がいかにすごいかが話題になっていましたが、その時はあまり感じませんでした。小さなテレビで見たせいでしょうか・・・こういうリアルで叙情的な風景表現を、今度は江戸時代や安土桃山時代をテーマにしたアニメでぜひ見たいものです。江戸の町が俯瞰で見られたり、安土城を再現した映像を作ってほしいなあ・・・

私が入場したのは16:30からの回です。コロナ禍で入場はすべて予約制。当初は7月〜9月の開催でしたが、8月12日(水)~11月3日 (祝)に変更され、私が訪れたのは最終日の1日前。時間制限の入場で初めはゆったりでしたが、気がついたら周りはたくさんの人。そして時間はあっという間に経ち、閉館の6時となってしまい、帰るときはほとんど入場者がいないという、1時間30分の楽しい時間でした。

2018年にパリのラ・ヴィレットで開催され、人気を博した「MANGA⟺TOKYO」展
残念なのは、ジオラマにたどり着く前の入り口の展示がチープで、もうしこしワクワク感が欲しいと思いました。
電車を再現した展示。窓の映像は動画。

この展覧会は、2018年にパリのラ・ヴィレットで開催され、人気を博した「MANGA⟺TOKYO」展の凱旋帰国展のようです。本来ならは、オリンピックの開催時に合わせた、訪日外国人を意識した展覧会になるはずで、パネルには、日本語、英語、フランス語、中国語、韓国語の案内が掲げられていました。次回は2020年11月21日(土)~2021年1月17日(日)に大分県立美術館で開催されます。コロナに十分気をつけながらも、たくさんの方の入場を願っています。

https://www.opam.jp/exhibitions/detail/622