編集長ブログ

心地よく透明でセクシーなミュージシャン!ケビン・オーの魅力

始まりは『D.P.』の「Crazy」 だった

初めて心を奪われたミュージシャン、ケビン・オーのことを語りたい。

私好みのミュージシャンは何人もいるが、あくまでも歌や演奏に限られていた。しかしケビンは、音楽の才能はもちろん、容姿、雰囲気、声、感性、活動、思考、嗜好・・・全部が好きなのだ。すっかり虜になっている。俳優やk-popスターとは違うポジションで輝いている、私のエンジェルだ。

きっかけは、2021年にネット配信されたドラマ『D.P.-脱走兵追跡官-』(以下『D.P.』)のOST「Crazy」だった。『D.P.』は軍務を放棄した脱走兵を追跡する部隊「D.P.」の話で、軍の過酷な実態を浮き彫りにしたことで、社会的な問題を醸した、いいドラマだった。OSTも人気になったらしいが、当時の私にはあまり印象に残らなかった。

しかし、もうじき『D.P.シーズン2』が配信され、さらにバージョンアップされたOSTが話題になっていることもあり、改めてシーズン1のOSTを聴いてみた。「Crazy」は、ドラマの冒頭で流されるメインOSTだった。

シビアなドラマに、この穏やかなバラードは、妙な悲しさを誘う。ドラマでは、笑顔を封印したD.P.役のチョン・ヘインに惹きつけられていったが、「Crazy」は、まるで彼の乾いた心をあらわしているかのような歌だった。ちょっとかすれて心地良い、私の大好きな声質。メロディも歌詞も(とても辛い歌詞ではあるが・・・)ものすごくいい!

それがケビン・オーだった。

ケビン・オーは正真正銘のGOLDEN BOYだった!

興味を持つと、どんどん調べたくなるのが私の性分だが、知れば知るほどケビンの魅力にはまっていく。

彼は1990年生まれの韓国系アメリカ人のシンガーソングライター。高級リゾート地で有名なニューヨークのロングアイランド出身で、祖父はアメリカでも有名な牧師という。学歴や職歴もすごい。安定した職業の投資銀行家になるつもりで、名門ダートマス大学で経済学を専攻(その前はニューヨーク大学医学部神経科学研究所の研究員だったらしい)。音楽は子供の時から趣味でやっていたが、どうしても好きな音楽に関わる仕事がしたくて、卒業後はカスタムヘッドホンを開発して起業。そして韓国に渡り音楽の道を突き進んだ。2015年韓国のミュージシャンのサバイバルオーディション番組「SUPER STAR K7」で優勝(この番組の初代優勝者はソ・イングクだ)。2016年デビューシングルを発売しアーティストとして本格的な活動を開始した。2019年には「SUPER BAND」に登場しさらに名を上げ、作詞・作曲・編曲までやってのける「天才シンガーソングライター」「オムチナ(何でもできる完璧な息子)」として知られていた。彼は頭脳も家系も申し分のない、しかもイケメンで181cmの高身長、まさに正真正銘の「ゴールデンボーイ」だった。人気が出ないわけがない。

驚いたのは、彼はなんと昨年結婚した人気女優コン・ヒョジンの夫だったのだ。独身主義者の彼女が10歳年下のミュージシャンと結婚して話題になっていたが、それがケビン・オーだったとは・・・(ケビンは夫として申し分のないハイスペックな男だった)。コン・ヒョジンは、その前はリュ・スンボム(彼も大好きな俳優だ)と長く付き合っていたが、う~ん、私と男の好みが似ているのか・・・まあ、コン・ヒョジンだったらしょうがない。ちなみにケビンが今まで付き合った女性は全て年上だったようだ。

彼の顔はちょっとユ・アインに似ている(もっとピュアに可愛くした感じ)。少年のような、くるっとした驚くほどきれいな目が印象的で、この容姿と時折見せる色気が彼の音楽とぴったりなのだ。こういうミュージシャンはなかなかいない(コン・ヒョジンもこのピュアさの虜になったはず)。

ケビンは、自身のMV(ミュージックビデオ)にも出演して、情感のあるいい雰囲気を出しているが、なんとNetflixのドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』(2021)に、俳優として出演していた。養子としてアメリカに渡ったマシュー・グリーン役で9話に登場する。セリフは少ないが、儚げな人物像を醸し出し、涙を誘う。どこまで才能豊かな男なのだろうか。彼は大学で経済を専攻していたが、演技にも興味があり演劇も専攻していたようで、大学でミュージカルの舞台にも立っていた。今後もチャンスがあれば演技をしていきたいと語っており、俳優ケビンへの期待が膨らむ。


⬆️LGBTQ+の大きな話題にもなり、新たなケビンの魅力をみせた「Lover」のMV(2018)
『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』に出演したケビン・オー。オーディションを受けてこの役を得たという。

ケビン・オーの“ゆらぎ”のある声の魅力

ケビン・オーは、YouTubeや自身のライブ配信など、たくさんの姿をネットで見ることができるが、中でも「SUPER BAND」で披露された演奏は素晴らしい。

「SUPER BAND」は、2019年に放送された、世界で活躍するバンドを目指す「音楽天才たちのバンド結成プロジェクト」で、かなりレベルの高いオーディション番組のようだ。ロック、クラシックなど音楽ジャンルを問わないし、ケビン(2015年「SUPER STAR K7」の優勝者)のように、すでにデビューして名の知れた者、アイドルグループのメンバー、天才ギタリストなども参加している。まず本戦を勝ち抜いた者の中からチーム(バンド)を結成するリーダーが選ばれ、そのリーダーが自分のバンドのメンバーを選んでチームを結成。メンバーは合宿で披露する楽曲を練習して対決していくというものらしい。演奏曲は、オリジナル曲でも、既存の曲をアレンジしたものでもいい。

ケビンがリーダーとして出場した時の様子が動画にあった。才能の持ち主が集まって、こんなすごいことができるんだという驚きだった(なんとケビンはチェロも弾けるようだ)。

本選の2ラウンドでケビンが演奏曲に選んだのは、韓国のブルースの大御所ハン・ヨンエの「誰かいますか」。1988年の大ヒット曲だ。パンチの効いたハン・ヨンエとは違い、実に優しく、息を吐きかけるように「ヨボセヨ~・・・」と歌い出す。ああ、一瞬ですべてを持っていかれてしまう・・・

この声がケビンの一番の魅力だと、私は思う。なかなかうまく言えないが、少しかすれていて、このかすれ具合が実に心地いい。小さい声も大きな声も、全てがナチュラルで心地よく響く。そしてセクシー。空気とハモっているような不思議な声なのだ。“ゆらぎ”のある声とでもいうのだろうか、まさに「天使の声」だ。

そしてもう一つは、ケビンの曲の素晴らしさだ。作詞、作曲、編曲までやってのける。「SUPER STAR K7」や「SUPER BAND」のオーディションでも、彼は積極的にオリジナル曲を歌い、審査員や視聴者の心を掴んでいる。本来なら馴染みのある既成曲が有利なのだが、気持ちを込めた自作の歌が、よりケビンの魅力を高め、豊かな才能をアピールしたようだ。

「誰かいますか」は曲のアレンジも素晴らしく、メンバーの持ち味を活かした演奏も超一流。お互いの個性が美しく共鳴するシン・グァンイルとのツインボーカル、クラシック出身のパク・チャンヨンのチェロのテクニックが格調を高め「最も完成度の高い曲だった」と絶賛された。後半の英語で歌われている歌詞は、おそらくオリジナルだろう。この歌詞があることで、25歳の青春の歌になっている。4人の天才たちの編成で、原曲とは全く違う、叙情的でエレガントな「誰かいますか」が誕生したのだ。それにしても、このメンバーを選んだ、ケビンの「人を見抜く力」は凄い。

ケビン・オーの「青春の光と影

これは「SUPER BAND」の準決勝第2ラウンドで演奏されたもので、「ビフォア・サンライズ」という曲だ。1995年のアメリカ映画『ビフォア・サンライズ』にインスパイアされた、ケビンチームのオリジナル曲。恋愛映画の金字塔とも言われたこの映画は、列車の中で知りあった若い男女の14時間のラブストーリー。映画が人気になったのは、彼らのセリフが洒落ていて、恋愛哲学映画になっていることだ。再会を約束して二人は別れるところで映画は終わる。その後が気になるところだが、9年後にその続編『ビフォア・サンセット』、さらに9年後に『ビフォア・ミッドナイト』が、同じ俳優で製作されているから、凄い。もちろん私も、その9年後の映画を見た。シンプルな台詞劇だが、年齢に関わらず心に刺さるものがある。

ケビンの歌詞には、『ビフォア・サンライズ』に登場する珠玉の台詞やシーンが散りばめられている。度肝を抜かれたのは、曲がストップして、映画のようなセリフが挟まれること。映画を見た人ならわかるはずだが、男女がお互いを知るため、質問をして相手がそれに答えていくシーンがある。それとそっくりで、しかも女性の声もそっくりなのだ。答えるケビンの声は実にセクシー!思わずライバルたちからも驚愕の叫びが発せられた、ケビンならではの演劇的な演出だ。

「Remember」は、すでに独立して活躍していたケビンが、「SUPER BAND」に出演して披露した最初の曲。しかも自作の曲だ。少し緊張した様子だったが、どんどん惹き込まれていく。時々カメラに流し目気味に軽く微笑むが、これがたまらない。さらなる才能が開花しているケビンの音楽を、審査員の一人は「さらに熟した」と絶賛していた。スター性抜群。ギター1本で、これだけ魅了するのかと、シビれた。

ケビンの音楽はとても洒落ている。感傷的になりすぎず、シャウトしすぎず、楽器や声が共鳴しあい、何度もいうが、心地いい。彼の歌には、青春の光と影がある。愛するひとへの想い、優しさ、不安、恐れ、勇気・・・全てが美しく響いてくる。ケビンは詩人なのだ。「Anytime, Anywhere」も大好きなオリジナル曲で、何度も繰り返し、ヒーリング音楽のように聴いている。

⬆️「Anytime, Anywhere」のMVには、ケビンの弟や妹も登場している。幼い3兄弟妹の幸せそうな映像が微笑ましい。この曲は恋人への想いを歌ったのかと思ったが、もしかして家族への愛を歌ったのかもしれない。

ケビンはドラマのOSTもたくさん手がけていて、私の大好きなドラマもあったことをあとで知った。最後にいくつか紹介したい。

ドラマ『シカゴタイプライター~時を超えてきみを想う~』「Be My Ligh」

ドラマ『ユミの細胞たち シーズン2』「Where My Heart Falls」

ドラマ『ディア・マイ・フレンズ』「Baby Blue」

【Textile-Tree/成田典子】