
まずは2023年の「風」から
今年も青空の美しい、「風」が気持ちのいい新年を迎えました。
2023年の私は、大晦日に衝撃を受けた藤井 風でスタートしました。
久しぶりに見たNHKの紅白歌合戦。
藤井 風、鳥肌が立った。こんなすごい人がいるんだ・・・
いきなり始まった心揺さぶるピアノ、感情を吐き出す独特の歌い方、危険な男の微笑み、色気たっぷりの眼差し・・・一瞬で全部持っていかれました。どのジャンルにも当てはまらない、どこにもいなかったアーティスト。こんな日本人に出会ったことが嬉しくてたまりません。夢中でネット検索しました。
「死ぬのがいいわ」は、Spotifyで2022年に世界で最も再生された日本の楽曲。2021の紅白歌合戦も見たら、これもすごかった。12歳の時から、世界を見据えてYouTubeで配信していたという、まさに新しい時代の申し子。彼が兄の“空”と演奏していたのは昭和歌謡、フォーク、演歌、ショパン・・・どれもがものすごく新しい。彼らにはこれらの曲がどう響いていたのか・・・
彼は岡山弁で淡々と話す。岡山弁って、こんなにセクシーだっけ・・・英語はネイティブ並み。子供たちと話す目線はピュアで、音楽と自分の心としか向き合っていない人間のよう。詞もすごくいい。メロディもシンプルで心にすーと入ってくる。国境を越え、世界中の人々を魅了する人って、こんな人なんだなあ。つくづくそう思う。
世界マーケットを狙うのは当たり前の時代になりました。日本の映画やドラマもNetflix、Amazon prime video、Disney+などで配信されたり、制作されたりするようになり、クォリティの高さも蘇ってきました。スキルも高くなりました。けど、それだけじゃ心は揺さぶられないのです。だからこそ、自分のルーツや文化、衒(てら)いのない感性や独自性などと徹底して向き合うことが、ますます重要になっているような気がするのです。
日向水中綱引きのこと

2023年のTextile-Treeの年賀状は、弘子姉さんの「日向水中綱引き」です。福井県美浜町日向(ひるが)では、毎年厳寒の1月に、日向橋(通称:太鼓橋)付近で、江戸時代から続くという神事「水中綱引き」が行われます。凍てつくような運河に、下穿き(したばき)1枚で飛び込んで行う綱引きで、国の選択無形民俗文化財に指定されています。

水中綱引きが行われた由来は、昔大蛇が出て運河を塞いでしまった時に、大きな綱を作って運河に張ったら大蛇が出なくなったという説など、いくつかあります。
綱引きは地元の若者たちが東西に別れ、綱を早く引きちぎることを競います。もみ合いながら、引っ張ったり、ほどいたり、噛みちぎったりしながら、早くちぎった方が、綱を海の方に流して海の神様に捧げ、疫病・厄祓いと大漁を祈願して綱引きが終了します。
日向が舞台となった映画『夜叉』
実は日向は、高倉 健主演の名作映画『夜叉』(1985)の舞台になった地です。三方五胡(みかたごこ)のひとつである日向湖畔に細長く集落が密集している典型的な漁村。かつては京都の丹後半島の伊根(いね)町のような、住居と船のガレージが一緒になった「船屋(ふなや)」が立ち並んでいました。漁師は家からそのまま船に乗り、太鼓橋をくぐって海に出て漁を行います。しかし、船屋の後ろは、小型車がやっと通れるくらいの路地だったので、災害時に消防車も通ることができません。そのため湖畔の一部を埋め立てて湖岸道路を作る工事が行われ、2008年に完成しました。現在は船溜まりとなり、コンクリートで固められた護岸は、船着場や漁具置き場・作業場として利用されています。『夜叉』では、船屋があった当時の日向の暮らしが詩情豊かに写し出されています。






『夜叉』は、Amazon prime Videoで見ることができます。北陸新幹線の通過駅となり、すっかり変わってしまった敦賀駅の、昔懐かしい姿も出てきます。ストーリーは、大阪ミナミの伝説のヤクザだった高倉健が、足を洗い日向にある奥さん(いしだあゆみ)の実家で漁師となり静かに暮らします。そこにミナミから流れてきた田中裕子(ものすごく色っぽいのです)が「蛍」という小料理屋を開き、高倉健は彼女に心を奪われて行きます・・・魔性の女・田中裕子と静かに戦う妻のいしだあゆみもよかった。ビートたけし、田中邦衛など、味のある役者も勢揃い。ストーリーもいいのですが、映像がものすごく美しい。音楽も実に洒落ています。おすすめの映画です。

現在の日向もまだこの雰囲気を残し、映画のシーンのような昭和を感じさせてくれます。漁師さんが経営している民宿は、魚の美味しさと量の多さに驚きます。ぜひ日向にもお出かけください。