サプール~コンゴのエレガンス

こんにちは、あをやまです。
桜の季節を通り過ぎたような陽気の横浜で「着るアフリカ展」のサプールについて取材しました。

実はサプールには妙な縁を感じていて「たまたま」が重なり過ぎて、取材は「必然」になった気がします。いや、もちろん興味があるんですけどね。
数年前テレビを点けっぱなしでウトウトし、夜中に目が覚めたら「サプール」。ふらり立ち寄った図書館での紳士服書籍の特別展示に「サプール」。
美容室の雑誌で見つけた写真展の予告が「サプール」。その写真展(2017年10月)に行ったら、まさかのサプールリーダーが会場見学に来ていた。
書かない訳にいかないぞ~。
*白い壁の写真は今回の展示品ですが黒い壁のは2017年のものを載せています。

サプール(SAPEUR)とはコンゴで90年以上の歴史を持つ、伊達な紳士達の協会というんでしょうか?フランス語でいう「お洒落で優雅な紳士教会」の意の頭文字を省略したという説があります。内戦の絶えない、貧困地域に誕生した、平和を愛するスタイリッシュな人達で作られています。自由に発言できない彼らの、世界に向けての平和アピールがファッションだったそうです。


⬆️写真家のSAP CHANO(サップ チャノ)氏のトークイベントに参加しました。

コンゴは二つの地域に分かれています。ベルギー植民地だったキンサシャ(コンゴ民主共和国)と、フランス植民地だったブラザヴィル(コンゴ共和国)。共にカトリック教徒が多く、どちらのサプールも平和第一主義。でもファッションの傾向ははっきり分かれていて前者はモノトーン、後者はカラフルです。


⬆️モノトーンのキンサシャで圧倒的に支持されているのはYohji Yamamoto(ヨージ・ヤマモト)なんですって。

その理由は、コンゴで「神」と崇められていたミュージシャン、パパ・ウェンバが1980年代半ば、当時の独裁政権の「国民服を作る」という案に反抗しステージでヨージの服を着た。本来なら逮捕されるところを、国民に絶対的な人気のあるウェンバを逮捕したら大変なことになると、厳重注意にとどめられたそうです。ヨージの服を着てると逮捕されない、ヨージすごい!


⬆️胸のブランドネームを見せて「ヨージ・ヤマモト!」とアピールするサプール達。中には日本人の名前入りもあり、中古の服と分かるものも。

ステップを踏んで人目を惹くのは、元々注目されたい国民性があったからでステップ自体に意味はないとか。それにしても見せ方が上手い!上手すぎる‼︎モデル顔負けじゃありませんか。カメラを向けると勝手にポーズを取ってくれるそうで「撮影は楽でしたよ~」とSAP CHANO氏。


⬆️サプールリーダーのムイエンゴ・ダニエルさん(通称セブランさん)はフランス領だったブラザヴィルのサプールです。こちらではディオールやサンローランなどのフランス老舗メゾンやイタリア仕立てのスーツが好まれるようです。エレガントですね。

内戦が激化した時、彼はほんの3日家を空けるつもりで大切なスーツを庭に埋めて(空巣対策)避難しました。しかし結局戻れたのは1年後で、スーツはすっかり朽ち果てていた。「争いは何も生まない」「戦いたくないからお洒落する」「お洒落したら汚したくないもんね」。危険や貧困と隣り合わせのコンゴだから、人生楽しまなくては損だと。といってもガチガチ真面目ではなく、基本的にお茶目で明るい人達のようです。セブランさん率いるブラザヴィルのサプールは、日曜の教会に通います。お洒落で品行方正、子供達の憧れになっているそうです。


⬆️上は元公務員のセブランさんと家族。

サプールが世界に知られるようになったのは意外と最近らしいです。2014年にイタリア人写真家が写真集を出したのがきっかけで、イギリスのギネスビールのCMに使われ、私がテレビで知ったのは2014年の年末だったか。その後SAP CHANO氏が写真集を出版。実は彼らの写真を撮る際、撮影の了承の他に謝礼も渡しているそうです。お洒落してお金も貰えて、人に認められて、あわよくば日本にも行ける。中にはにわかサプールも現れて「撮ってくれ」と寄って来たり。でも、にわか達はステップ踏めない、ポーズも決まらない。流暢なフランス語も話せない。すぐバレるんだって。

彼らは3万円程度の月収で20万、30万円するスーツを買うんですがまずローンを払い切って、それからやっと服が手元に来るそうです。年収の半分近くをファッションに費やすと。それでもサプールになりたいんですね。以前テレビで見た時、ちょっと気の荒い若者がサプールの心構えを伝授されていました。土埃の道でも華麗にステップ踏んで、先輩サプールの横に座る時は涼しい顔。決して相手の顔をジロジロ見てはいけない。喧嘩はいけない、クールにと。そしてきちんと仕事を持って、人から信頼されるようにと。装いが人格を作るように感じました。


⬆️女性サプールもいて、ご主人のスーツを共有しているのか着るのはメンズなんです。「男女平等なの」。


⬆️2017年秋にばったり会ったセブランさんの写真です。予想外に小柄で、気さくな方でした。

色々なお話が聞けたし、女性服のカンガの展示も面白かったけどまたの機会に。ここ数年、サプールが気になっていたのは「本気のお洒落をする人達」という印象が強くてそれをまず、書いておこうと思ったのでした。ああ、ちょっとホッとしたな~。

余談ですが、現在公開中の映画「グリーンブック」、お勧めです。1962年当時、まだ黒人差別が強く残るアメリカ南部に演奏旅行に出た黒人の天才ピアニスト(助演)と粗野なイタリア人用心棒(主演)が主人公です。ピアニスト役の身のこなしと服は洗練されていてサプールを思い出しました。彼のセリフ「暴力は負けなんだ」。音楽もストーリーも洒落てましたよ。

楽ちんな服で映画を観たけど、帰りは背筋が伸びたっけ。