素材の話

大満足の、林与さん「手織りストールワークショップ」体験

「2027SS FABRICa NIPPON」(2026年3月4日・5日)に出展していた林与(はやしよ)https://www.hayashiyo.comさんが、「手織りストールワークショップ」を開催するというので、予約して体験してきました。

手織りは初体験。ワークショップは苦手でほとんど参加することはないのですが、アルパカ混のストールが材料費込みで6,000円で織ることできるというのですから、申し込まない手はありません。ストールは、幅約40cm、長さ約185cm~190cm(本体約160cm+房上下各約15cm)という申し分のないサイズ。しかも6色の中から色を選べる至れり尽くせりの企画。私は迷わず欲しかった赤いストールを選択。一緒に参加した織り経験のあるAさんは、何色かを使った「ボーダー柄」を希望しました。

私がこれから織る織機です。参加者が選んだ糸の整経作業なども終え、すぐ織れる状態にセットされています。
ワークショップを開催した林与の林社長(左) と、いつもイベントの手伝いをしてくださる江國さん(右)。江國さんは沖縄で縫製業をされている方ですが、こうして駆けつけてくださいます。

ストールを織る準備1.「毛糸の選定」

実は織物というのは、織るまでの準備がとても大変なのです。
林与さんは麻織物の老舗ですが、今回のような毛糸を使った手織りは初めてのことなので、まずはどのような糸が適しているかから始めます。毛糸は糸の撚りが甘いので、織り機にも対応できる糸であることや、糸のクオリティも吟味されアルパカ混のいい糸を選択してくれました。林社長は今回織っていただくストールを試織し、ご自分でも着用したところ、かなり暖かいと実感したようで、糸に自信を持ってワークショップをスタートしたといいます。

林与さんが選ばれたアルパカ混の毛糸。なんと6色の中から選ぶことができます!

ストールを織る準備2.「糸の整経(せいけい)」

次に、それぞれの参加者が選んだ糸の整経(せいけい)の準備です。
整経とは、経(たて)糸を整える工程で、織物を織るのに必要なタテ糸の本数・長さ・張力を均等に整える、とても重要な作業です。タテ糸の張り具合が均一でなかったり、本数や長さがバラバラだと、織っている最中に糸が緩んだり切れたりなどの不具合が生じてしまいます。

ストールを織る準備3.「綜絖(そうこう)」と「筬(おさ)」のこと

織物が織機で織られる仕組みを簡単に説明します。
出来上がる布の長さと幅は、タテ糸の長さと糸の本数によって決まります。タテ糸は、長さの分だけ織り手の奥にある男巻き(おまき)という円筒状の部品に巻きつけられ、綜絖(そうこう)という細長い金属棒にある「目」に1本1本通されます(綜絖通し)。綜絖は、綜絖枠(そうこうわく)に、布幅に合わせた数だけたくさん取り付けられます。

綜絖を通ったタテ糸は「筬(おさ)」という櫛状の器具の隙間を通ります(筬通し)。筬は仕切り(隙間)に通すタテ糸の密度で織りの強弱を操作する役割があります。綜絖枠はペダルを踏むことで上下逆方向に動き、同時にタテ糸が上下するので、その隙間にヨコ糸を巻いた「杼(ひ):シャトル」を通すことで、タテ糸とヨコ糸が交差されて複雑な織りや柄を織ることができるのです。

今回織るストールは「平織り(ひらおり)」という、タテ糸とヨコ糸が交互に交差する単純な織りで、綜絖枠は2枚です。複雑な織りになるほど綜絖枠の数が増えて、20枚以上使用するものもあります。

また、筬は“トントン”と前後に打ち込むことで、目が詰められて密に織ることができます。この“トントン”が、いわゆる機織りの音です。慣れてくると“トントン”のリズムが掴めるようになり、織る楽しみも増してきます。織り上がった布は、織り手の手前にある千巻き(ちまき)という円筒状の棒に巻き取られていきます。

初めて手織りをする方もいるので、まずは織り方の手本を見せてくれます。林社長は、3分くらいの簡単な説明で、初心者が織れるようになったことに驚いていました。

「織る」ことの難しさと楽しさ

ワークショップでは、滋賀の工場から運んだ5台の織機が用意されており、無料体験コーナーもあります。織機には参加者が、あらかじめ希望した色のタテ糸がすでにセットされているので、ヨコ糸を通して織るだけです。

といっても初めは、ペダルを踏むタイミングとヨコ糸を通すタイミング、左右の耳の部分の力加減、糸の張り具合など、織ってみないとわからないことが多々あります。糸が途中で切れたりすることもありますが、トラブルやわからない時はとても親切に教えていただけるので心配いりません。飲み込みの遅い私は、出だしの耳の部分がガタガタでしたが、仕上がって見ると、そんなに気にはなりません。それはそれで味があります。なによりも、生まれて初めて織ったストールに大満足でした。

無料手織り体験コーナーもあるので、興味持った方はその場ですぐ織り体験ができます!
手織り初体験の私の織り状態!!力具合が均等でなく、耳もガタガタ・・・でもそれはそれで愛嬌がある、味のあるストールと慰められました〜〜〜
こちらは織り体験のあるAさんの織り状態。タテ糸にベージュ、ヨコ糸はオフ白、紺、グレージュの3色を使用したボーダー柄です。左右の耳も実に綺麗!!!

ちょっと恥ずかしい話と、感動する話

何事も実際にやってみることで、その仕組みやコツが理解でき、手仕事の面白さがわいてきます。これは私にとって大きな収穫でした。しかし残念ながら、なんとも不器用な私は、スタートに時間がかかり、所要時間内に織ることができませんでした。ワークショップ最終日の最終時間枠だったので、これ以上延長することができませんでした。しかしありがたいことに、私が織ることのできなかった残りを、織機ごと滋賀県の林与さんの工場まで運んでくれて、林社長が織ってくださったのです!しかも織ったストールを湯通しして、房まで編んで付けて送ってくださって~~~もうお礼のしようがないくらい、ありがたかったです。

他の参加者の皆さんは、ご自分で織ったストールと自慢できますが、私はそうはいかず・・・しかし、林社長との協同作業の本当に嬉しい1枚です。
ちなみに手間のかかる3色のボーダー柄を織ったAさんは、時間内にしっかり織り上げ、嬉しそうに持ち帰りました。林社長もこれには大絶賛。いろんな受講者がいるので、次回の参考になったと話しておられました。

私が織ったストールは140cmで、目標の160cmには足りず・・・
Aさんの3色ボーダーのストールは、目標の長さに達しているので、房の長さを残して糸をカットします。
色合いも素敵で、とてもいい感じに織れたAさんのストール。

林社長の「織物愛とものづくり愛」

今回のワークショップのストールは、房無しだと幅約40cm、長さ約160cmが目標ですが、私は140cmほどしか織っていませんでした。本来ならば不足分20cmでいいのですが、林社長は、背が高い私だったら少し長めがいいだろうと、なんと35cmプラスして、一般的なストールの長さの約195cm(本体170cm+房12cmX2)に仕上げてくださったのです。

湯通しして房をつけた完成品が林社長から送られてきました〜〜〜
半分に折って巻いた様子。広げて肩にかけても暖かくていい感じです。

林与さんは、本当に信頼のあるクォリティの高いものづくりをする麻織物メーカーさんです。「一時は万事」とも言いますが、今回のワークショップ一つを取ってみても、一人一人の参加者の満足度を高めようと、きめ細かく考えてくれています。(正直言って)儲けにならず、手間がかかることをここまで誠実にやるのかと、本当に驚くばかりです。

林社長は、ワークショップがテキスタイルイベントを盛り上げるひとつの要素となり、無料の手織り体験もあるので、多くの方に手織りを経験して楽しんでもらえたら嬉しいと話していました。日本の誇る織物文化をつないで行きたいという林社長の思いも感じられる、素晴らしい体験をさせていただきました。

本当にありがとうございました。

Textile-Tree/成田典子