素材の話

島精機支店長の、熱い種!Vol.3(できること…)

『テキスタイル用語辞典』制作でもお世話になっている
株式会社島精機製作所」東京支店の
雑賀(さいか)支店長のお話しの続きです。

雑賀支店長はどんどん廃業していく日本のニット事情を憂い
「まずは歯止めの杭を打つことだ」と考え
10年程前から30代や40代の
東京の若手(ニット業界ではそうなのです)ニッターさんと
年2回くらいの親睦会を始めました。
地方のニッターさんと違い
東京は家族数人でやっている家内工業的なところがほとんどです。

特別なイベントや勉強会などはしないで
集まっていろんな話しをする会だといいます。
イベントや勉強会をすると最初はいいけど長続きしない。
強制はしないで本当に来たい人だけくる…
「飲み会のようなものですけど…」とおっしゃいますが
現在は、フリーのニットデザイナーさんも加わり40人あまり。

今の時代、ベテランのニットデザイナーさんも仕事の無い状態です。
ニッターさんもニットデザイナーさんも
全く違う仕事へ職替えしていく人が増えています。
一度他の仕事に就いたら戻ってくるのは難しいのです。

「これは人材を減らさない活動なんですよ」
集まっていろんな話しをすると
「大変なのは自分だけではない…もっと頑張ってみよう!」
そういう気持ちがわいてくるのだと言います。

「この程度しかできませんけど」と苦笑していましたが
これは雑賀支店長全くの個人的な活動です。

大学で教えた学生さんが就職し、
「先生のあの言葉に刺激されました」と
挨拶にくることもあるそうです。
先日の『ジャパン・ベストニット・セレクション』では
経済産業省の方に国内ニット事情を熱く語ったことがきっかけで
今度、島精機さんに視察にこられることになったと伺いました。

誰かがこうして「熱い種」を蒔くことで
いつか芽が出て、それが育ち、また誰かが種を蒔き…
こういう行動が大切だなとつくづく感じました。

クリスマスの今日
私も「一粒の熱い種」をプレゼントします。

【Textile-Tree/成田典子】