2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.4伝統と革新の有松鳴海絞

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。


・・・・ウールや麻、ポリエステルなどに二次加工をして新しく表現した「有松鳴海絞」・・・・

「有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)」は、
江戸時代より、愛知県名古屋市の有松地域(有松絞り)と、
鳴海地域(鳴海絞り)を中心に生産されている伝統的な絞り染めで、
木綿の絞りの手拭や浴衣地が代表的。
「括る・縫う・巻く」の3つの基本動作で、
手蜘蛛絞り、疋田三浦絞り、雪花絞り、鹿の子絞り、帽子絞りなど
100種類以上の絞りの技法が生み出され、様々な柄や形が作られます。
これが「有松鳴海絞」の最大の特徴となっています。

今回の『T・N JAPAN』には愛知県絞工業組合から
スズサン、(有)絞染色 久野染工場、(株)山上商店の3社が出展。
いずれも、伝統工芸品とは一線を画す、
現代のライフスタイルに根差した「有松鳴海絞」の
新しいクリエーションを展開しているメーカーや工房です。


・・・・左から藤井祥二さん(絞染色 久野染工場)、村瀬裕さん(スズサン)、
山上正晃さん(山上商店)・・・・

愛知県絞工業組合の理事も務める、「スズサン」の村瀬裕さんは、
「有松鳴海絞」の企画・製造・販売を行うかたわら、
絞りの体験教室や講習会など、
絞りの楽しさや可能性を広げる啓蒙活動にも力を注いでいます。

木綿に施す伝統的な「有松鳴海絞」だけではなく、
ウールや麻、ポリエステルに伝統的な括りや縫い取りの絞りを行い、
さらに塩縮加工、シュリンク加工、縮絨、ヒートセットなどの二次加工を施す、
新しい「有松鳴海絞」を開発。
「有松鳴海絞」の技法が、和の分野だけにとらわれることなく
ファッションやインテリア分野など、もっと自由に表現できるものとして
新たな価値を創造し続けています。


・・・・ヒートセットを施し、形態を安定させたベルベットの絞り。
シルクやポリエステルにヒートセットを施すことで、まるで不思議な
生物のような立体的な表面感を出すことに成功しました・・・・

絞り卸製造業の(株)山上商店の山上正晃さんは、
主に製品の企画を行っています。
絞りの加工業者さんに発注し、製品化し、販売していく役割です。
新しいもの作りのマーケットの開拓なども行っています。


・・・・ウール100%に「絞り」+「縮絨」「染色」「抜染」の組み合わせにより
様々な表情があらわれることを示した、サンプルボード・・・・


・・・・ウール100%の加工しない生地・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、黒く「染色」してから「抜染」したもの・・・・


・・・・「巻き上げ絞り」をして、藍色に「染色」してから「縮絨」を弱くかけたもの・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、グレーに「染色」したもの・・・・


・・・・赤に「染色」してから「縮絨」を強くかけたもの。
膨らんでいる部分は“コイン”を入れて絞った「コイン絞り」・・・・

「スズサン」の村瀬裕さんは海外への進出も積極的で、ドイツで息子さんが
絞りの会社を作り、絞りのランプシェード、クッション、ストール、
ファブリックなどをヨーロッパやアメリカなどで展開しています。


・・・・海外販売も展開している「スズサン」の手絞りのランプシェード・・・・


・・・・非常に大胆でモダンな柄のクッション・・・・

今回の展示会にはいらしていませんでしたが、
(有)絞染色 久野染工場の代表である久野剛資さんは、
絞り作家としても活躍されている方です。
伝統的な和装絞りはもとより、
三宅一生をはじめとする国内外のデザイナーの作品、
舞台衣装、インテリアなど、幅広い分野を手掛けています。
久野さんもやはり、受け継がれてきた絞りの技術を
後世にも伝えていきたいと、名古屋芸術大学から
インターンを受け入れたり、見学者のために工房を開放したり、
体験教室なども開催しています。
今回の展示会にはインターンの藤井祥二さんがいらしていました。
インターンから久野染工場に入社する学生さんも少なくないようで
村井さんも卒業後の進路を期待されていました。


・・・・「板締め絞り」のウールのストール(左)・・・・


・・・・「帽子絞り」をして縮絨したウールのストール(右)・・・・


・・・・リネンに絞りを入れ、アルカリシュリンクを施したもの(左)・・・・

久野さんもまた「有松鳴海絞」を伝統工芸品に終らせるのではなく、
伝統に縛られることなく、垣根を取り払い、
もっと自由に表現していくことを望んでいます。
そのためには科学技術を利用して表現することも必要です。
伝統的な「有松鳴海絞」からしてみると、
“邪道” とも言われるかもしれませんが、
今の生活にマッチし、地域が活性化していくなら
時代とともに素材も表現も変わってもいいはずだと…。


・・・・絞りを入れた墨染め。シュリンク加工やヒートセットを施したもの・・・・


・・・・若いクリエーターとコラボした絞りのレギンス。
板締め絞りのポップな色・柄使いが新鮮です!・・・・

芸大の学生さんや、若いクリエーターがつくる絞りは
既成概念から解き放たれて、
新しい発想で非常に面白いものが仕上がってくるといいます。
久野さんも村瀬さんも、自分たちが受け継いだいいものを
次の時代につないでいくために、
惜しみなく技術や知識を伝えています。
山上さんは、それを形にしてプロデュース。
熱い3人の想いは、確実に若い人たちに伝わっているようです。