編集長ブログ

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.3日の出紡織(株)

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

愛知県一宮市の「日の出紡織(株)」は、
“カシミヤの概念”を広げてくれました。
ブースの前に無造作に掛けられている麻袋の
ドンゴロス(またはホップサック?)の
隣りの素材が“カシミヤ”と知り、ビックリ!
さっそく光﨑社長にお話しを伺いました。
※因みに「ドンゴロス」はコーヒー豆などを入れる麻袋。
「ホップサック」は、ビールのホップを入れる麻袋のことです。


・・・・無造作に掛けられているドンゴロスとカシミヤ。
その下にあるのはヴィンテージ加工を施されたハリスツイード・・・・

ドンゴロスの隣りにあるカシミヤは、
ドンゴロスそっくりに織られたカシミヤ100%。
スペック染めにしてムラ感を出し、ホップサックツイードのように
ザックリと織りあげ、洗いをかけた無骨な仕上げです。
「カシミヤドンゴロス」と呼びたいくらいの粗野感があります。
しかし触ると…まさに、ふんわり柔らかのカシミヤの“きもち良さ!”
この見た目と、触ったときのギャップがたまらなく新鮮です。


・・・・左はジュートの麻袋。右はカシミヤ100%・・・・

通常、カシミヤ100%をこのくらいザックリ織って、洗いをかけると
くたっとコシのない織物になってしまいますが
この織りには特殊な仕掛けがあり、張り感を出しているといいます。
ある素材を交織しているのですが、それが何かは企業ヒミツとか…


・・・・まさに麻袋の表情です!けどカシミヤ100%・・・・


・・・・織りの裏側。これが企業ヒミツの交織!ウレタンかな?何かしら…・・・・

光﨑社長は、今回は「きもちいい」をテーマに
カシミヤやツイードなどで、新しい加工表現に挑戦したといいます。
“高級品”のイメージがつきまとうカシミヤは、
ラフにカジュアルに仕上げて、もっと普段使いに。
かっちりしたツイードは、かなり着込んだような風合いや色合いに。
紅茶染め、錆染めなど、試行錯誤で“経年表現” を試みました。


・・・・左は、ロンドンのハリスツイード協会の商標マークを付けた
ハリスツイードそのままの生地。
右は、その生地をヴィンテージ加工したもの。
まるで3世代受け継がれてきたハリスツイードのジャケットのように、
ハリスツイード特有のごわごわ感がなくなり、
柔らかな風合いと、経年したような色むら感が特徴の生地に
仕上げられています。
ハリスツイード協会の許可済みの仕上げ加工とのこと・・・・


・・・・張り感のある英国羊毛と柔らかなカシミヤを交織したツイード。
とてもソフトで「きもちいい」仕上げです・・・・


・・・・左のヘリンボーンツイードは、微妙なムラ感を出して、風合いもとてもソフト・・・・


・・・・真ん中のカシミヤのホップサックツイードには
微妙にラメが入っています。(拡大したもの)
カシミヤをラスティックなホップサックに織り上げ
さらにキラキラ感をスパイス的に入れている…この正反対の組み合わせが
まさに2013・2014/AWのトレンド!・・・・


・・・・これは、トレーナーに使われる「裏毛編み」のカットソーですが、
表は綿、そして裏パイル部分がふわふわのカシミヤなのです!・・・・


・・・・裏(右のグレーの部分)は起毛パイルのカシミヤ!・・・・

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』のパンフレットには
日の出紡織(株)が下記のコメントを載せています。

ほん・ぽう(奔放)3回の裏
・常識や規範にとらわれないこと。
・自分のおもうままに振る舞うこと(さま)。
・自由でありボーダレスなモノづくり。


・・・・ナチュラルヘアのカシミヤニット。
麻ひもで縛った演出もいい感じ・・・・


・・・・長年着馴染んできたようなピリングやネップ風の
表面感の仕上げも「きもちいい」です・・・・

従来ある素材を、見方を変えて仕上げ加工で
新しい価値観に変えていく。
これも現在もの作りのトレンドとなっている「リノベーション」の
ひとつの表現だと思います。
今回の展示会はまだ研究段階なので、まずはみなさんの
反応を確かめることが目的。
価格面はこれから検討していくようです。
素材の魅力はしっかり訪れた方のハートを鷲掴みです。
実売に向けてぜひ頑張って欲しいものです。

 

【Textile-Tree/成田典子】