素材の話

rooms33」Vol.1「mmpascual」とアンデスのテキスタイル「Aguayo(アグアヨ)」

「rooms33」(9/14~16)最終日に出かけました。
展示会で、オリジナリティがあり、完成度の高い作品(商品)に
出会えると嬉しいものです。

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今回一目惚れしたのが、アルゼンチンの
『mmpasucual(mmパスクアル)』というアクセサリーブランド。
アーティストは、Marcela Pascual(マルセラ・パスクアル)と
Marina Pascual(マリーナ・パスクアル)の姉妹です。

目を引いたのは、金属パーツに埋め込まれた
カラフルなテキスタイルの美しさ。
織りのような、編みのような、刺繍のような・・・
それでいてどこか懐かしいような・・・いったいこれは何?


・・工房で一つ一つ丁寧に作られたアクセサリーで、
留め具もなどのパーツも手作りで、まさに作家モノ!・・

実はアンデス地方で見られる「Aguayo(アグアヨ)」というもの。
「Awayo(アワイヨ、アワヨ)」という呼び名もあるようです。
アルゼンチン、ボリビア、ペルー、チリなどのアンデス地方の
先住民のインディオの伝統的な織物で、
ストライブ状に色や柄を織り込んだもの。
写真を見ると“あっ、これか”と思うでしょう。
マンタ(マントウ)と呼ばれる掛布にして、
子供をおんぶしたり、荷物を背負ったり、部屋を飾ったりと、
多様な使い方をします。ポンチョなどもあります。

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アンデス02
アンデス03
・・この写真は、1987年にペルーに行った時に撮影したもの。
この当時で、安いお土産物のマントウは、化合繊・化学染料で
織られたカラフルなものが売られていました・・

本来はアルパカなどの毛を紡いで、草木染料など
天然染料で染めたもので、赤色はサボテンなどに付く
カイガラムシの鮮やかなコチニール色素が用いられます。
媒染技術が発達していたアンデス地方では、
生地に破損があっても、発色の良い色は
100年後もしっかり残されているのです。

現在は、化学繊維や化学染料を用いた鮮やかなものもありますが、
本来は、家族のために糸を紡ぎ、
天然染めをし、手間と時間をかけて織り上げ、
子供が生まれた時からずっとそれを使用していくものです。

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マルセラとマリーナ姉妹は、
アンティークの伝統的なインディオのAguayoを用い
自分たちの工房で、アクセサリーとして蘇らせました。
パーツ一つ一つを手作りで、ハンダ付けしながら
Aguayoのピースを作り、丁寧にはめ込んでいきます。
アンティークのAguayoと金属パーツのアクセサリーは
鮮やかな色とテクスチャーの組み合わせが抜群に美しく、
しかも金属パーツのアート性や完成度が
非常に優れているのです。

アトリエの様子をこちらのYouTubeで見ることができます。↓

私もどれにしようか色々迷って購入しましたが、
1個じゃ物足りなかったと、ちょっと後悔です・・・

最近はきものや帯などの日本のテキスタイルや
手仕事に優れた民族調の伝統素材を“リフォーム”や
“アップサイクル”するクリエーター(と呼べないレベルの方も)
が増えましたが、元の素材の素晴らしさが
生かされたものに出会えるのは、そう多くはありません。
そこに自分のオリジナリティと
クリエーションの完成度がともなっていないのです。
先人の手仕事をリスペクトし、
自分の手仕事とクリエーションをコラボレートする
そういう作品に出会えると、本当に嬉しくなります。

【Textile-Tree/成田典子】