素材の話

「ギフト・ショー秋2012」vol.1新しい日本の伝統

「第74回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2012」が
開催されました。(9月5日〜7日)

ギフトなど生活雑貨の国際見本市としては、日本最大級(恐らくアジア最大級)。
今回の入場数は3日間で190,038人。
前回(196,673人)よりは減少していますが、外国からの入場者は増加。
それでも19万人という入場者には驚かされます。
何しろ東館・西館の全館使用しての展示会ですので、
なかなか1日では取材しきれません。
今回は「中小機構」の取材に多くを費やしてしまったので、
他がほとんど回れなかったのが残念です。

・・・・受付では長い列ができています・・・・


・・・・様々な業種のたくさんの人で賑わっています・・・・

そういう中で、日本の伝統技術を持っているメーカーさんの
新しいもの作りをいくつか取材したので、ご紹介します。

『ぽっちり』
『ぽっちり』は、創業明治28年、履物や和雑貨の企画製造・販売の
京都の(株)伊と忠を母体とした、がまぐち専門のブランドです。


・・・・シンプルで洗練された『ぽっちり』のブース・・・・

企画から生産までを京都を中心にした国内で行う
日本で随一のがまぐちブランドを目指し、2012年に立ち上げました。
現在、京都祇園本店と、東京スカイツリータウン・ソラマチ店がオープンしており、
品切れも出る人気振りです。

私も会場で一目惚れ!
商品、ブースの佇まい、販促物など、とても洗練されたディレクションです。
『ぽっちり』のがまぐちは、京都の袋物職人の巧の技で作られています。
女性心をくすぐるモダンでKAWAIIデザインであり、
かつ生地のクォリティや製品の完成度が高い。
長年培った技術に、「デザン」という新しい生命が吹き込まれています。


・・・・レジメンタルストライプのがまぐち、名刺入れ、印鑑入れなど。
京都の機屋(はたや)さんのネクタイ生地を使っています・・・・


・・・・富士山のジャカードもこんなにカワイク!・・・・

なぜ「made in Japan」にこだわるのか…
日本のもの作りがいいのは、
作り手の思いや意思が強く商品に反映されているからです。
企画・指示段階で気がつかないことが、製造現場の創意工夫で
より良い商品に出来上がることがしばしばあるといいます。

同じようなことを他でも聞くことがあります。
同じ仕様書で日本のメーカーと海外のメーカーに頼むと
日本のもの作りの方が断然良い。
海外は「指示されたように作りました」という。
しかし日本のメーカーや職人さんは
「指示された以上のもの」を作ってくる。
その違いはなにか…それは「作り手のプライド」です。
日本のメーカーが凄いのは、「プライド」でものを作るからなのです。

『ぽっちり』もプライドでものを作るメーカーのひとつでしょう。
今後の展開がとても楽しみです。


・・・・薔薇のジャカード(ドビー柄かな?)も素敵です!・・・・


・・・・「ぽっちり」とは、舞子さんが身につけている帯留めの愛称で、
何とも愛らしい名前です。それを代表する柄がこれです・・・・


・・・・このがまぐちの丸い金具の大きさがたまりません!・・・・


・・・・合皮にパンチングで穴を開けてこんなドット柄に!

 「うるしアートはりや」
石川県加賀市山中温泉の蒔絵工房「うるしアートはりや」をご紹介します。
山中温泉地区は、山中漆器(山中塗)で知られる日本有数の漆器産地です。
この地で「うるしアートはりや」は1981年創立。
伝統工芸士の針谷祐之さん・絹代さんご夫妻と
二人の息子さんほかスタッフのみなさんで制作している
ファミリー工房です。


・・・・伝統工芸士の針谷絹代さんと、ご長男の崇之(たかゆき)さん
(母息子と知ってびっくりでした!)・・・・

絹代さんは、高校を卒業後、当時としては珍しかった
女性の蒔絵師として修行を積み独立。
当初は茶道具などの伝統的な蒔絵を制作していましたが、
需要の減少などにともない
「もっと多くの方に蒔絵の素晴らしい技術を知って欲しい」と思うようになり
アクセサリーなど、新しい分野に取り組みはじめました。
金魚やフクロウ、蝶などの愛らしい動物や、桜、ひょうたん、だるまなどの
日本的なモチーフが、ブローチやペンダントヘッドなどで
新しい漆の魅力となって引き出されています。


・・・・「うるしアートはりま」のブース。左の金魚のポスターが素敵でした!・・・


・・・・絹代さんも大好きという金魚のモチーフ
(私も金魚が一番気に入りました!)・・・・


・・・・愛らしい動物たちのアクセサリー。
フクロウは「編集長ブログ」のアイコン!欲しいなぁ・・・・

そして後を継ぐご長男の崇之さんも
とても魅力的なメンズアクセサリーのブランド
「MT.ARTINGIANO」を立ち上げました。
Gift Showの会場では、伊藤若冲の「鶏」の蒔絵の
ループタイやカフスボタンが、多くの方達の目を惹いていました。


・・・・伊藤若冲の「鶏」の蒔絵のループタイ・・・・


・・・・モダンなデザインのカフスボタン・・・・


・・・・・若冲の絵がいきいきと今に甦っています・・・・

絹代さんは、自分が受け継いだ伝統技術を
なくしてはいけない、伝えていきたいという強い気持ちを持っています。
幸いなことに、二人の息子さんはご両親の仕事を受け継ぎ
現在は修行の身ではありながら、
自分たちならではの新しい表現をし始めています。
絹代さんのクリエーションも、飽くなき追求が続きます。
展示会終了間際のばたばたした取材でしたが、
今度はゆっくり取材したいです。

「二葉苑」
ほとんど取材ができませんでしたが、とっても気になったブースです。
二葉苑」は90年以上の歴史を誇る、落合の江戸染色工房です。
東京、新宿落合は、かつては日本有数の染めの産地であり
江戸小紋、江戸更紗をはじめ、江戸友禅、江戸紅型などの染色業者が集まり
その関連の職人さんたちも含め、着物の一大産地を形成していました。


・・・・“二葉”の粋なのれんと、江戸更紗や江戸小紋のがまぐちを
吊るしたディスプレイ・・・・

「二葉苑」は、江戸染色の“粋”を現代に伝えるとともに、
新しい可能性を常に発信し続けている染め工房です。
ギャラリーやショップ、ワークショップなどを通じ
江戸染色文化や着物文化を次世代に受け継いでもらおうとする
活動も注目されます。
落合はTextile Treeとも近いので、ぜひ個別取材に伺いたいです。


・・・・和紙を張り巡らした手づくり風のブース・・・・


・・・・染色用の刷毛もディスプレイ。年期が入っています・・・・


・・・・ノスタルジックな藍染めの江戸小紋の日傘。いいなぁ!・・・・