素材の話

レースの魅力と怖さ…


このところ『テキスタイル用語辞典』の「レース」の執筆に
のめり込んでしまい、すっかりブログもご無沙汰してしまいました。
4月29日の英国のロイヤルウエディングの
ドレスやレースの素材も気になるところだし、
色々調べていたらあっという間に時間が経ってしまい…

ヨーロッパにとって「レース」というのは
歴史を動かすくらいに重要なものです。
16世紀〜18世紀のレースといえばハンドメイドレースのこと。
熟練の職人が1cm四方を織る(編む)のに、
15時間〜25時間もかかるといいます。
気の遠くなるような時間と作業を経て作られる
まさに「宝石」に匹敵するほどの希少価値があるものなのです。
「レース産業」は国の基幹産業として
莫大な利益を生み出すものですから、その技術は門外不出。
イタリアのヴェネチアでは、レース職人が国外で仕事をすると
死刑になったといいます。

映画などで貴婦人がレースのハンカチを落として
殿方の気を惹くというシーンがありますが
何しろこの時代は「宝石」を落としたようなものですから
それはそれは大変なことなのです。
ハンカチを男性に差し上げるということは
「自分の心を差し上げる」に等しいこと。
そのことを題材にした歴史物語も数多くあります。
王侯貴族の肖像画は何はともあれ
レースだけは正確に描くことを要求されたようです。
フランス革命の原因のひとつはマリー・アントワネットの
レース好きによる浪費といわれ、
フランス革命後、フランスのレース産業は潰されています。

「レースマニアの世界」はファッションとはまた別の次元で
私も今までなかなかアンティーク・レースのことを
勉強する機会が無かったのですが
今回徹底して調べたことでその奥の深さに驚きました。
特に「歴史とレースの物語」には心が惹かれます。
もう少し時間ができたらもっと調べてみたいものです。

そして先日のロイヤルウエディングのレースですが
ロイヤルウエディングには英国伝統のレースが使われ
その背景にある話も大変興味深いものがあります。
そのことは次回に書きたいと思います。