『ヤマナシ ハタオリトラベル』(有)テンジン

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(有)テンジンをご紹介します。

(有)テンジン<テンジンファクトリー>
は、富士吉田の織物産地で
最も注目されている織物工場のひとつです。
かつては服地の裏地を織り、その後は傘地やネクタイを作ってきました。
ほとんどの織物工場は、コンバーター(問屋)からの注文を受けて
生地を織ります。


・・・・テンジンファクトリーの自社ブランド『ALDIN』のロゴマーク・・・・


・・・・『ALDIN』のパンフレットもオシャレでいい感じです・・・・

しかし、三代目の小林新司さんは、100%外注のシステムに疑問を感じました。
産地の機屋も自分たちで企画して、生地だけではなく製品も販売できる
メーカーとならなければこれからの時代を生き延びていけないと考え、
2000年にリネンブランド『ALDIN(アルディン)』を立ち上げました。
織物工場が企画して製品を販売する「ファクトリー・ブランド」の誕生です。
「生地を織り、デザインし、仕立てる」すべての工程を手掛けます。
織機もあえて高速のレピア織機から、昔ながらの低速のシャトル織機に切り替え、
ふっくらと温かみのある麻織物づくりにこだわりました。


・・・・(有)テンジンの専務であり、三代目の小林新司さん(左)・・・・


・・・・“機械美”に圧倒されるシャトル織機を揃えた工場・・・・


・・・・シャトル織機に柄を織りなすドビー装置を装着した「ドビー織機」。
パンチカード(紋紙)に図柄のデーターを組み込んで使用します。
コンピューター化が多い中で、パンチカードを使用して織るのは
非常に希少です・・・・


・・・・タイプライターのようなこの機械は、
ドビーのパンチカード(紋紙)を作るものです。
初めて見ました!もちろん現役で使用されているからすごい・・・・

小林新司さんは、かつて織物が丁寧に織られ、大切に使われた時代のように
長く使い込まれ“アンティークリネン”“ヴィンテージリネン”となるような
製品づくりを目指しました。
ヨーロッパでは当たり前のように親から子へと受け継がれている「リネン文化」を
富士吉田の地から発信し始めたのです。


・・・・シャトル織機は熟練した職人さんたちの技術なくしては織れません・・・・


・・・・よこ糸を巻いたスピンドルを中に入れて使用するシャトル・・・・


・・・・シャトルが往復して(折り返し)よこ糸を織りなしていくシャトル織機は、
両端が織り込まれ、「耳(セルヴィッチ)」と呼ばれる独特の端が織り上がります。
セルヴィッチもデザインのひとつとして、色を代えて配色したりします・・・・

シャトル織機は、糸や機械を手で微調整しながら、
長年の勘と経験で織る“職人さん”の熟練した技術が活かされる織機です。
小林新司さんは、代々伝えられてきた「高い“技術”を受け継いでいくこと」を
大きな使命としたのです。
そのためには完成度の高い“デザイン”を吹き込んでいくことが
不可欠と痛感していました。
いくら素晴らしい技術を持っていても、製品としてのデザイン的な魅力がなければ
マーケットで受け入れてもらうことができません。
目指したのは、流行に左右されない「ロングライフデザイン」でした。


・・・・ショールームで説明してくださったのは、小林新司さんの奥様。
アルディ事業部を担当しています・・・・


・・・・ショールームは心地良い日が入り、
アトリエ風のオシャレな雰囲気を醸し出しています・・・・


・・・・オリジナルブランドの『ALDIN』のカタログも丁寧に作られています。
織りから製品まですべて地場で作り上げており、
「YAMANASHI,JAPAN」の文字が印象的でした。
「YAMANASHI」をブランド化しようとする意思が伺えます・・・

『ALDIN』の製品のデザインにはデザイナーの妹さんご夫婦が
携わることになりました。
妹さんご夫婦は、人気ブランド『R&D.M.Co-』を手掛けている
オールドマンズテーラーの、しむら祐次さんと、とくさんです。
ヨーロッパのハウスリネンのような、手仕事風の刺繍、シンプルでモダンなドビー柄、
かすれ感を出したスペック染め、ネクタイの織り技術を応用したやすら織り、
バイオ加工でソフトに仕上げるなど、懐かしく生活に馴染んでいくような製品です。
テンジンファクトリーでは、他にもネクタイやストールの『LOPEN』、
カーテンなどの『Processus』などのブランドを展開しています。
OEMもやっていますが、すべて地場で作る丁寧なもの作りが特徴で
大量生産はできません。


・・・・・高密度のワッフル織り(蜂巣織り)のリネンタオル・・・・


・・・・シャトル織機で織った証しの「耳」もきれいです・・・・


・・・・優しい肌触りのリバーシブルの水玉柄・・・・


・・・・パリパリにかたい生機(きばた)状態のリネンのソムリエエプトンですが…・・・・


・・・・洗い込んでいくとソフトでとってもいい風合いになっていきます・・・・


・・・・かつて本業だったネクタイも麻素材で展開・・・・


・・・・先染めのチェックやストライプも素敵なカーテン地に・・・・


・・・・シンプルな麻のドレスやエプロン・・・・

富士吉田の織物産地は、小規模な家族経営が多いのが特徴です。
テンジンファクトリーは、織りから製品のデザインまでを家族で作ることのできる
理想のファクトリーブランドとなり、
富士吉田の織物工場の新しい方向のお手本となっています。

富士吉田産地のみならず、高い技術を持っている老舗の織物工場は、
大きな帰路に立っております。
技術に自信を持っている工場は、外注100%の単なる織物工場から
自分たちで企画ができ、製品化まで行える「ファクトリーブランド」に
転身したいと考えているところも多くなってきました。
しかし、マーケットニーズがよくわからなかったり、
製品化の工場背景がなかったり、何をどうやって作っていいのか
模索しているところが多いのも現状です。

もちろん「デザイン力」は非常に重要な要素ですが
自分たちが何を目指し、どういうものを作っていこうとするのかという
「コンセプト」や「ディレクション」がなくしては細部にばかり目がいってしまい
“核”のないもの作りとなってしまいます。
まずは、ブランドとしての哲学をきちんと持ち、
スタートされることを願うばかりです。


・・・・工場の前は木造のショールーム。ペンキを塗ったカントリーハウスのような
温もりのある佇まい。廻りには緑の山が広がります。「こういうところで働きたい…」
そう思わせる環境も重要な気がします・・・・