自然の杢目と木の香り…「木織りの布」。

木で織った作品の展示会があると伺い
さほどの期待もなかったのですが…
これが本当に「木で織った布」であることを知り、驚きました!
まさに「テキスタイルツリー」なのです。

それは、フランス語で「木肌」を意味する
boisette(ボワゼット)』という「木の織物」ブランドです。

展示会場の中央には手織りの織機がおかれ
「木の糸」が織り込まれていました。
たてに「絹糸」、よこに「木の糸」を使います。
自然の木肌と絹の光沢の美しいコントラストです。

20年前に「木を織物にできないか…」という
とんでもないロマンのもと、開発が進められました。
試行錯誤を重ね、木を柔軟にする加工技術と織り機を開発。
天然木がつくりあげてきた
自然の「杢目(もくめ)」と木の香りを残して
木そのものを柔軟な織物とにできる
全く新しい発想の「木の布」が誕生しました。

木織りに使われる木はヒノキ、ヒバ、屋久杉などの銘木を
0.08mm〜0.12mmに薄くスライスします。
木のカンナくずのようなものを特殊溶液に浸し
(ここがノウハウのようです)
和紙を裏打ちして0.6mmの糸状に裁断します。
これを自動織機で織れるのは
日本で(世界で!)、桐生と沖縄の2カ所だけです。
最近はほとんど使われなくなった低速織機で
1日4mくらいしか織ることができません。
ゆっくり織ることで暖かみある風合いが出せるのです。

一見「板」のようですが、実はこれが「木織りの布」。
樹齢2000年の屋久杉などがそのまま織り込まれ
天然の杢目が再びあらわれてきます。
しなやかな、まったく新しい「木」に生まれ変わるのです。

平織りだけではなくジャカードも織ることができます。
バッグ、帽子、小物雑貨をはじめ、洋服にも採用されました。
椅子張り、ランプシェード、パーテーションなどのインテリアも素敵です。
群馬県の植樹祭では木織りを使った椅子で両陛下をお迎えしました。
神社の木をお守りに…など使い方のアイデアはたくさんあります。

うっすらと木の香りのするテディベア。

服飾小物をプロデュースしているのが
浅草のレザー業界でも活躍している
レザーコーディネーターの成澤敏彦さんです。
ナチュラルな木の肌合いと
鮮やかなレザーのモダンなコントラストが新鮮です。

椅子などのプロダクトデザインは
小笠原利明さんが手がけています。
「玄関椅子」は腰掛け部分をひっくり返すと
また違うイメージで使用することができます。

ジャカードで織られた、クリエーター高橋隆男さんの作品です。

『boisette』を制作・販売している(株)東栄工業
営業部の大橋さんからお話しを伺いました。

本業は建築関係の仕事ですが
ケミカル方面の建築技術を活かすことができ
木織りの布を完成するに至ったと言います。

木に和紙を裏打ちして糸にする手法は
「引箔織り(ひきばくおり)」という
金銀などの箔織りに見られる、日本古来の織りです。

2000年も生きていた木に
長い歴史を持つ京都西陣の最高技術と
建築資材の科学者の技術と
織りの伝統工芸士の技が集積され
20年の歳月をかけて新たな命が吹き込まれました。

この「オンリーワン」の『boisette』は
各業界からの問い合わせも多く
いろんな可能性を秘めた「新素材」として活躍が期待されます。