素材の話

竹原あき子先生の『縞のミステリー』

縞のミステリー』を読んだ時に、
「なんて面白い本だろう!」と思いました。
残念ながら『テキスタイル用語辞典』の執筆が終っていたので
もっと早くこの本に出会っていたら…と、悔やまれるほど。
国内外の縞にまつわる話しが本当に良く調べられており、
しかも端的に無駄のない巧みな文章で語られています。


・・・・『縞のミステリー』の表紙はアフリカのアシャンティ族の
「ケンテ」。この複雑な縞柄が、実は単語を組み合わせた文字のような
役割になっているというから驚きです!・・・・

私は特に「伊勢」の話しが好きです。
かつて伊勢は松坂、河内と並び木綿縞の一大産地であり
「伊勢木綿」は伊勢神宮へ全国から「お伊勢参り」にやってくる
観光客の名物の土産物でした。
伊勢は、日本中からの情報が集まる土地です。
観光客は最新の農業技術、最新のファッション、
踊りや歌などの芸能も仕入れて持ち帰ったといいます。
ものだけではなく、実生活に必要なノウハウまで持ち帰るという
実務型の旅だったのです。
伊勢木綿や伊勢型紙などの伊勢の物販をはじめ、伊勢の行商人さえも
“伊勢”と名のつくものが有名ブランドとなりました。


・・・・竹原先生から見せていただいた「唐桟縞(とうざんじま)」。
これが17世紀頃のものか今調べているところだそうです・・・・

時代劇でおなじみの「縞の合羽(かっぱ)に三度笠」の姿は
実は、近江、松坂、伊勢の商人たちが
縞の木綿を全国に売り歩くための行商の衣装…
いわば歩く広告塔だったのです。
そんな話しなどがびっしり詰まった名著、ぜひ一読をお勧めします。

その著者である竹原あき子先生に、先日初めてお会いすることができました。
もともとは工業デザイナーである竹原先生は、
現在は和光大学名誉教授。
プロダクトデザイン、デザイン史、衣装論などその専門分野は幅広く
知識の豊富さが、奥深い文章を生み出しているのだと思いました。


・・・・木を中心にした先生のオフィスは、窓が広く明るく、
とっても心地良い素敵な所でした・・・・


・・・・とってもチャーミングな竹原先生。ナチュラルでユーモアがあり、
一目会った瞬間から人を虜にする魅力が一杯!・・・・


・・・・先生が古着屋さんで見つけた「唐桟縞」のもんぺ。
あちこちに継ぎが当てられており、それがパッチワークのようで
いい味を出しているのです・・・・

『縞のミステリー』は、木綿の町、浜松の「遠州縞」の笠井町出身で
布に囲まれて育った先生の、思いが込められた一冊。
次の執筆のテーマもすでに決まっており、今準備にかかっているそうです。
著書の『縞のミステリー』へのサインをお願いしましたら
「次の本は?」という、嬉しい一言を書いてくださいました。
私も頑張らねば!


・・・竹原先生からサインをいただきました!・・・・