素材の話

キャサリン妃のウエディングレースの話【VOL.2】


英国ロイヤルウエディングでキャサリン妃の
ウエディングドレスのトップに使われていたのは
「カリクマクロス・レース」という、
アイルランドの伝統なチュール・レースです。
1981年のダイアナ妃ののウエディングドレスにも
使われました。

1820年にアイルランドの
カリクマクロス(キャリックマクロス)で始められたという
手工レースで、チュールの上に花や葉のモチーフを作り
アップリケとカットワークを駆使しながら作る
大変手間のかかるレースで、
1900年代初めにはほとんど姿を消したといわれています。
今回は英国王立刺繍学校の教師や生徒、卒業生により
作られたそうです。

アップリケされるモチーフは
フランスの「シャンティイ・レース」という
チュール・レースのモチーフをカットして使われました。
シャンティイ・レースは
特に「黒」のチュール・レースが有名ですが
かつてはハンドレースのウエディングレースや
ヴェールなどが作られていました。
マリー・アントワネットや
皇妃エリザベートに愛好されたことでも知られています。

シャンティイ・レースからカットされた花や葉のモチーフは
バラ(イングランドの国花)、アザミ(スコットランドの国花)
シャムロック(アイルランドの国花)、
スイセン(ウェールズの国花) で
これらがカリクマクロス・レースの技法で
ちりばめられています。
全て意味のある模様なのです。

なかなか写真では分かりにくかったのですが
ボディスとアンダースカートにもシャンティイ・レースや
英国の「クリュニー・レース」から切り抜かれたモチーフが
全面にアップリケされているようです。
「フランスのレースと英国のレースが結びついた」と
説明がありましたが、
これも何か国と国の意味するものがあるのでしょうか…

一見、シンプルでシックなウエディングドレスのように
思われますが、かなり手の込んだ装飾性があり
本当に吟味された素材と、二度と作ることはできないであろう
英国の素晴らしい伝統技術が隠されてれているのです。

ちなみに、ダイアナ妃20歳、キャサリン妃29歳の花嫁です。
初々しいダイアナ妃、おとなの魅力のキャサリン妃が
よくあらわれている
二つの「カリクマクロス・レース」のウエディングドレスです。

「クリュニー・レース」については、また次回お話しします。



【Textile-Tree/成田典子】