私の「ボロ」

私はなかなか「断捨離」ができません。
年齢からしても「しなくては・・・」と思っているのですが、仕事柄もあり、古い資料やモノは捨てられないのです。『テキスタイル用語辞典』を作った時も、捨てなかった資料のおかげでどんなに助けられたか。いろんな生地を集めるのに大変苦労したこともあり、今も洋服がなかなか捨てられないのです。昔の生地の方がいいものがたくさんあるから、なおさらです。


⬆️2011年に撮影したどんぶく。この時はまだワタもふっくらしていました。

中でも捨てられないものが、母の手作りです。押入れの中には、ワタがたっぷり入った、母手製の立派な「嫁入り布団」があります。ずっとベッドだったのでほとんど使用していません。それと、私が結婚した時に、主人と私に作ってくれた「どんぶく」です。私の郷土(北秋田市)では綿入れの半纏(はんてん)を「どんぶく」と呼んでいます。当初は懐かしくて部屋で着ていましたが、その後全く活用しなくなりました。母が亡くなってからふと思い出し、引っ張り出しました。

2011年のブログにこの「どんぶく」のことを書きました。若い時は見向きもしなかった「どんぶく」ですが、ある程度の年齢になると、軽くて暖かく、ふわっと羽織れる「どんぶく」が、いかに重宝するかを身に染みて感じました。なにしろ素材は「絹」だからです。それから主人と私にとって毎年冬には欠かせないアイテムになりました。そして気がついたら、あちこち擦り切れ、中のワタが出てきたり、かなり悲惨な状態になっていました。


⬆️中のワタが露出した見るも無残な姿のどんぶく。もともと羽二重のように薄い生地なので、座る頻度が高いと劣化も激しくなります。まだ何も修理に手をつけていません。さてこれをどう料理したらいいものやら・・・

2017年、とても辛かった時期に、ふとこの「どんぶく」を修理しようと思い立ちました。母や主人の思い出がたくさん詰まったものです。手持ちの端切れから、合いそうなものを探して繕いを始めました。繕いに夢中になっている時は辛いことも忘れていました。


⬆️主人用のどんぶくは、かなり丈を長く作っています。なかなかこの長さはありません。着るといい感じなのです。袖口や襟のヘリの補正に使っている生地は、インド更紗です。こういう民族調の柄は、着物の柄によく合いました。

⬆️裾や、お尻の当たる内側は一番劣化が激しい場所です。使用しているのは、リバティプリントです。結構気に入っています。右側の生地もろうけつ染め調のエスニックな柄です。まだ途中で完成していません。

母が作ってくれた「どんぶく」は、誰かが着ていた着物をほどいた生地で作ったものだと思います。どちらも絹地で、私の「どんぶく」は、羽二重(はぶたえ)か甲斐絹(かいき)のような生地。主人のは「御召縞(おめしじま)」か「変わり鰹縞」のような、渋い縞柄です。生地は銘仙かな?ボロボロになるまで着ましたが、さらにそれを繕って着るのは私の楽しみであり、母もきっと喜んでくれていると思います。実はやり始めた途端に仕事が忙しくなったので中断していたのですが、「ボロ」を思い出して引っ張り出しました。繕いは楽しいものです。贅沢な時間と会話しながらコツコツやろうと思います

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2020年5月16日
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